ぼんち

山崎豊子「ぼんち」

ぼんぼんではない、肝の据わった“ぼんち”。

女系家族に生まれたひとり息子の女道楽。妾ひとり持つにも、月々の払いから本宅伺いの作法まで様々な決まりがある。物語もさることながら、大阪・船場の商家のしきたりや風習が過剰なほど書き込まれていて興味深い。火事の最初見舞など、商人同士の義理堅い関係も今読むと新鮮な驚きがある。

後半、戦争の足音とともに船場も花街も変わっていき、やがて大阪大空襲が街とともに文化も焼き尽くす。“失われてしまった大阪”が丁寧に描かれていて、長く読み継がれてほしい作品。

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