反劇的人間

安部公房、ドナルド・キーン「反劇的人間」

安部公房とドナルド・キーンの対談。40年近く前の対談だが、「日本人論」の流行に疑問を呈するところから始まり、古さは感じない。あまりまとまりのない内容だけど、所々に非常に鋭いやりとりがある。

安部の「人間の個性というものを信じない」という言葉や、特殊から普遍に至るという小説手法への疑問、『ゴドーを待ちながら』を例に挙げて物語よりも「時間」の存在を示されることが人間にとって一番心に響くという指摘など、なるほどと思わされた。

文学論では、安部が人物造形などから川端康成の作品を西洋的と感じると語る一方、キーンは逆に、文章や会話、物語の構造などから谷崎の方が西洋的と指摘するのも、それぞれの感性の違いが分かって面白い。

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