生きてるだけで、愛。

本谷有希子「生きてるだけで、愛。」

登場人物の行動やセリフの立ち方はさすが劇作家の作品という感じ。主人公の女性を演技力のある女優が演じたらそれだけで面白いだろう。

小説としても、蓮っ葉で饒舌な一人称の文体と、鬱と躁の間で揺れ動く描写に引き込まれる。

人間、誰とも分かり合うことなんてできないけれど、五千分の一秒だけでも誰かと繋がれたら、一瞬の光景でも相手の記憶に残せたら、という必死さが胸に残る。この切実さはとても現代的。

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