巨匠とマルガリータ

ミハイル・A・ブルガーコフ「巨匠とマルガリータ」
(池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)

ずっと前に買ったまま、厚さで敬遠していた一冊。読み始めると、奇想天外な展開に引き込まれてあっという間に読了。第一部は、モスクワに悪魔が現れてやりたい放題。第二部はタイトル通り“巨匠”とマルガリータの恋に焦点が当たる。そこに巨匠が書いたピラトの物語が重なる。

荒唐無稽な展開は、当時の社会主義の暗喩と解釈することもできるが、むしろ生きることそのものの不条理という感じで身に沁みる。イエスを磔刑にしたことに二千年の時を超えて苦悩するピラトに巨匠が最後に叫ぶ「おまえは自由だ」という言葉が強い余韻を残す。

文学的な評価を抜きにしても、悪魔が引き起こすドタバタと、巨匠に惚れて魔女になるマルガリータというキャラの魅力だけで十分面白い。

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