サド侯爵夫人・わが友ヒットラー

三島由紀夫「サド侯爵夫人・わが友ヒットラー」

サド侯爵を周囲の女性から描く三島由紀夫の戯曲。三島自身が解題で書いているように、日本で特異に発達した“翻訳劇演技”を逆手にとって豊穣な台詞を語らせている。詩のような言葉が続き、対話というより語り、様式美の世界。意識してこのような作品を書ける三島の超絶技巧にため息が出る。

併録の「わが友ヒットラー」は「サド侯爵夫人」ほどの衝撃は無いが、分かりやすく、スリルのある政治劇。粛正されるレームへの共感が滲んでおり、三島の政治観とともに人生観も垣間見えて興味深い。

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