深夜特急3 インド・ネパール

沢木耕太郎「深夜特急3 インド・ネパール」

三巻はインド横断とカトマンズ。70年代当時の混沌としたカルカッタやバラナシの様子が伝わってきて興味深い。二巻に続いて印象的なのが、汚い食事や野宿などの一つ一つについて、文句や苦労を語るのではなく、その都度、また一つ自由になれた気がしたと記していること。たしかに自分も安宿であればあるほど、そこに自由を感じていた。場末の宿屋の汚いベッドの上で、あるいは駅の軒下でうずくまって、自分はどこにだって行けるという気がした。

「便所で手が使えるようになった時、またひとつ自分が自由になれたような気がした。
 ガヤの駅前では野宿ができた。ブッダガヤの村の食堂ではスプーンやホークを使わず三本の指で食べられるようになった。そしてこのバグァでは便所で紙を使わなくてもすむようになった。次第に物から解き放たれていく。それが快かった」

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