水はみどろの宮

石牟礼道子「水はみどろの宮」

九州の山里で、渡し守の祖父と暮らす少女の物語。山犬らん、黒猫おノン、狐のごんの守……。石牟礼道子は、人間と自然の間に境界線が引かれる前の世界を鮮やかに描く。そこで人は山の声を聞き、風のささやきに耳をすませる。人と動物、植物の区別は無く、過去と未来も溶け合う。児童文学として書かれた作品だが、大人にとっても決して読みやすい物語ではない(むしろ感性の凝り固まった大人だからこそ、その世界になかなか入っていけないのかもしれない)。この作品に限らず、著者の作品を読むと、いつももう一つの世界の見え方を思い知らされる気がする。

コメントを残す