池澤夏樹=個人編集 日本文学全集08

池澤夏樹=個人編集 日本文学全集08
日本霊異記/今昔物語/宇治拾遺物語/発心集

鎌倉時代に成立したとされる「宇治拾遺物語」。煩悩を断ち切るために陰茎を断ち切った、という僧侶が貴族の家を訪れ、証拠として下半身を露出。主の命を受けた小僧が下半身の密林を探ると、刺激を受けたモノが巨大化して噓が露見。という話(「玉茎検知」)があって、高校生の頃に読んで度肝を抜かれたことを思い出す。

「毛の中より松茸のおほきやかなる物の、ふらゝといできて、腹にすはゝとうちつけたり」なんて中学生男子レベルの比喩の文章が千年近い時を超えて現代に残っているのだから、日本文学の懐は深い(古文の教科書には毒にも薬にもならないような話ばかり取り上げられているが、大学入試センターには是非センター試験にこうした話も取り上げてもらって、全国の受験生の度肝を抜いてほしい)。

とまあ、宇治拾遺物語には「こぶとり爺さん」「わらしべ長者」といったよく知られた昔話と同列に、現代のB級雑誌も真っ青な下ネタがたくさん収録されている。憧れの女性といざ本番という直前に屁をこかれて出家を思い立つ男の話や、一生不犯の戒律に自慰が含まれるか悩む僧侶の話、他人の陰茎を消す妖術を必死で習う武士の話などなど。

そんな宇治拾遺物語を町田康が現代語訳。これが面白くないわけがない。まるで町田康自身の創作のような気がしてしまうくらいはまっていて、読みつつ何度も吹いてしまった。

もちろん、その他の説話集も必読。今昔物語は新訳ではなく福永武彦の訳。日本霊異記、発心集は伊藤比呂美の新訳。最後に毎回教訓めいた締めの文章がついて、日本人の教訓話好きの原点が見えて面白い。理不尽な展開は全て前世からの宿縁として片付けられ、そんな話を何話も続けて読んでいると本当にそういう気がしてきて、発心しそうになる。

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