西行 魂の旅路 <ビギナーズ・クラシックス 日本の古典>

西澤美仁「西行 魂の旅路 <ビギナーズ・クラシックス 日本の古典>」

和歌を解するような風雅な心も知識も無いけれど、西行から芭蕉、山頭火に至る旅する歌人が残した歌には幾つか心惹かれるものがある。それは、歌の精神性の高さに感銘を受けるというよりは、身近で分かりやすい感慨を素直な言葉で表現しているからだと思う。

西行や芭蕉の旅は、未踏の地を切り開くようなものではないし、当然ながら彼らは世捨て人でもない。武士としての将来を捨て、家族と離れて和歌と信仰の道に入った西行には、どこか超然としたイメージがつきまとうが、和歌や花の美、恋など、さまざまなものに執心し、そうした自分に対する戸惑いを歌にも残している。一つ一つの歌を見ていくと、なかなか好奇心旺盛な人だったということも分かる。

きっと西行も芭蕉も、彼らの時代にInstagramやTwitterのようなものがあれば、ずいぶんとこまめに投稿しただろうし、日々気の利いた一言をツイートした気がする。カフェでスコーンを写して「すてきな朝」とつぶやく現代人と彼らの間には、感性には天と地ほどの差があれど、どこか共通する表現衝動が感じられる、と言ったら大げさか。

この本は西行の主要な60首を読み解きつつ、その生涯と思想を探る。「ビギナーズ・クラシックス」と題されたシリーズの一冊だが、内容はかなり充実している。ただ断片的、専門的な考察が多く、西行入門としての最初の一冊には不適。西行の生涯や、代表的な歌の幾つかに関する知識はあった方がいい。

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