戦場の軍法会議―日本兵はなぜ処刑されたのか

NHK取材班、北博昭「戦場の軍法会議 ―日本兵はなぜ処刑されたのか」

NHKのドキュメンタリーの書籍版。戦時中の軍法会議についての証言は極めて少なく、関連文書も終戦時に組織的に焼却されてしまったため、残っていない。法務官の生き残りの多くは戦後法曹界のエリートになっていて(このあたりは医学界の闇とも似ている)、口を閉ざしてきた。

本来死刑では無い部隊からの離脱を、法を捻じ曲げて死刑にする。やがて軍法会議を経ない処刑さえ横行し、それも緊急時として認めていく。中には口減らしが疑われるケースすらある。

軍紀の乱れという単純なものではなく、軍紀の暴走。法の正義を軍内に及ばせるために存在した法務官(当初は文官だったが後に武官に)が、それにお墨付きを与える存在に変容していった。処刑されれば、戦後も国賊という汚名を着せられたまま、護国神社にすら祀られず、遺族年金も支給されない。国家の戦争が引き起こした二重、三重の苦しみに愕然とさせられる。

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