トム・ソーヤーの冒険

マーク・トウェイン「トム・ソーヤーの冒険」

米文学を代表する作品の一つで、最も有名なキャラクターとも言えるトム・ソーヤー。子供向けの抄訳には触れたことがあっても、通読したことがある人はそれほど多くないかもしれない。特に最近では「ハックルベリー・フィンの冒険」の方が文学的な評価が高いこともあり、その影に隠れてしまっている印象もある。

海賊になろうとしてみたり、宝探しを始めたり。女の子の関心を引こうとして空回りし、ハックルベリー・フィンらと無鉄砲ないたずらを重ねては、時に反省する。「憎めない悪童」像の典型であるトムは、米国という国の“永遠の少年”性を表している。近代以降の日本文学が夏目漱石の問いの延長にあるように、米文学はトウェインの流れを汲んでいると言える。

本編35章の大作だが、墓場で殺人事件を目撃したあたりから物語が加速していき、大人の読み物としても十分に面白い。19世紀の作品ということもあり、登場する先住民像には偏見が見られるが、トムやハックルベリーを通じて描かれる、自由を希求する精神は今なお輝きを失っていない。

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