冬眠する熊に添い寝してごらん

古川日出男「冬眠する熊に添い寝してごらん」

破格のスピードとスケール。明治の石油採掘村から現代の回転寿司屋まで、 現在と過去が複雑に溶け合う。2年前に蜷川幸雄演出で上演された戯曲で、ト書きに「時空は変容する」というような挑戦的な表現がしばしば出てくる。蜷川の演出は圧巻(舞台にそびえる“犬仏”や、客席通路までコンベアーを設置した巨大な回転寿司屋のセット、etc.)だったが、改めて戯曲を読んでみて、文学作品としても優れていると感じた。「あらゆるエネルギーは欲望する」という言葉に表されるように、近代日本のエネルギー史に、国家と個人の欲望が渾然一体となって描かれる。古川日出男は基本的には長編小説の作家だと思うが、戯曲もこの1作で終えてしまうのは惜しい。

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