香月洋一郎「景観写真論ノート 宮本常一のアルバムから」
宮本常一が撮った風景写真と、その景観を読み解いたメモをまとめた本。
田畑の形がどうなっているか、住家が密集しているか、分散しているか、山肌に何の木が植えられているか…景観にはその土地に生きた人々の暮らしの歴史が刻まれている。大学生の時に宮本の「空からの民俗学」を読んでそのことに気付かされて以来、景色を見る目が多少なりとも変わったのだが、その宮本のまなざしがよく分かる一冊。
海岸段丘の畑に均等な地割りがあれば、それは対等な立場の漁民が定住した土地の可能性が高く、開拓が誰か個人が中心となって始まった場合や、地主がいて土地が分け与えられた場合などは田畑は不揃いになる、など。
植えられている木の大きさを見れば定住してからの年月が分かるということも、当たり前だけど普段は意識しないだけに、改めて聞くとはっとさせられる。宮本のまなざしで田舎道を歩いてみたい。