西脇順三郎詩集

「西脇順三郎詩集」那珂太郎編

西脇順三郎の詩は難解と言われる。時間も場所も飛び越えた奔放なイメージの連なりは、たしかに分かりやすい物語ではない。しかしそこに描かれている情景は、植物だったり、自然の地形だったり、日々の生活の一コマだったり、決して日常からかけ離れたものではない。詩の良し悪しを語れるほどの知識も感性もないけど、解釈しようという意思を捨て、イメージのコラージュに身を任せるだけで、その世界を十分に楽しむことができる。
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朝鮮と日本に生きる――済州島から猪飼野へ

金時鐘「朝鮮と日本に生きる――済州島から猪飼野へ」

日本の戦後を象徴する詩人の自伝。

1929年に日本の植民地下の釜山で生まれた著者は、皇民化教育で日本語を学び、「皇国」の勝利を信じて育った。解放後に民族意識に目覚めたが、日本の詩歌に親しみを感じ、ハングルを満足に使いこなすことができない自分に深いコンプレックスを抱く。
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日本語のために 池澤夏樹=個人編集 日本文学全集30

池澤夏樹=個人編集 日本文学全集30
日本語のために

日本語は世界的に見ても非常に多様な表現形態を持っている。

池澤夏樹選の日本文学全集30巻は、文体のサンプル集とでも言うべき内容。祝詞や経文、漢詩から、琉歌(琉球語の定型詩)や、アイヌ語の文章まで。聖書の翻訳や、ハムレットの独白もそれぞれ6種類収録され、日本語の幅の広さがよく分かる。
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空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集―

寮美千子「空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集―」

少年刑務所の教室で書かれた57篇の詩。技巧の全くないシンプルな言葉だけに、純粋な気持ちがすっと伝わってくる。特に家族に関する詩が多く、中には抑圧などの微妙な歪みが感じられるものも。

「犯罪者」とどう向き合うか。少年犯罪は家族や周囲の環境の影響が大きいだけに、更正は非常に大きなテーマだが、それを抜きにしても一冊の詩集として胸を打つし、詩とか言葉の原点を感じさせる。