西脇順三郎詩集

「西脇順三郎詩集」那珂太郎編

西脇順三郎の詩は難解と言われる。時間も場所も飛び越えた奔放なイメージの連なりは、たしかに分かりやすい物語ではない。しかしそこに描かれている情景は、植物だったり、自然の地形だったり、日々の生活の一コマだったり、決して日常からかけ離れたものではない。詩の良し悪しを語れるほどの知識も感性もないけど、解釈しようという意思を捨て、イメージのコラージュに身を任せるだけで、その世界を十分に楽しむことができる。

「窓に/うす明りのつく/人の世の淋しき」
「ばらといふ字はどうしても/覚えられない書くたびに/字引をひく哀れなる/夜明に悲しき首を出す/窓の淋しき」
「九月の始め/街道の岩片から/青いどんぐりのさがる」

168の短章からなる長編詩「旅人かへらず」は、断片的な情景描写がひたすら続く。中には「かたい庭」など一言だけで終わる章もある。その情景が、想像の目の前を通り過ぎていくとともに、存在することの本質的な淋しさというような感慨が浮かび上がってくる。そもそも淋しさを感じるということが、人が存在するということなのかもしれない。

「人間は土の上で生命を得て土の上で死ぬ『もの』である。だが人間には永遠といふ淋しい気持の無限の世界を感じる力がある」と西脇は別の詩のあとがきで書いている。

個としての人が生きられる時間はせいぜい数十年で、経験や記憶にも限りがある。それでもわたしたちには永遠へとつながる感性がある。それを芸術は捉えようとする。

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