「仲野教授の そろそろ大阪の話をしよう」

仲野徹「仲野教授の そろそろ大阪の話をしよう」

仲野徹・大阪大教授と大阪にまつわる専門家らの対談集。テーマは歴史、言葉、食から、音楽、落語、花街、鉄道など多岐にわたる。気楽な読み物であると同時に、内容はディープ。「面白い対談」の見本のような一冊。
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キュー

上田岳弘「キュー」

石原莞爾の思想が語られる戦中・戦後、心療内科医の主人公が奇妙な体験をする現代、「個」が廃止された地球で現代人のGenius lul-lulがコールドスリープから目を覚ます未来の三つの時代が交互に描かれる。

効率、必然で歴史が進んでいくとしたら、人間を人間たらしめているのは、それに抗う力なのかもしれない。
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死にがいを求めて生きているの

朝井リョウ「死にがいを求めて生きているの」

ゆとり教育を挙げるまでもなく、平成という時代は(表面的には)競争や対立を忌避してきた。その平成が終わった今、世の中はどうしてこんなにギスギスしているのか。

ある事故で意識を失ったままの智也と、彼を献身的に見舞う雄介の2人を軸に平成に育った男女の姿を描く。表面上は親しげに接しながら、言葉の端々でマウントを取り合う様が生々しい。
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図書室

岸政彦「図書室」

著者の書く文章には、温かな諦念というようなまなざしが常に感じられる。諦念というとネガティブに聞こえるが、それは自分や他者の人生に対する肯定と一体となっている。

表題作は、五十歳の「私」が、幼い頃に通った公民館の図書室で出会った少年との思い出を振り返る。小学生の二人が交わす大阪弁の会話がほほ笑ましい。人類が滅亡した後にどうすれば生き残れるか。切なく、おかしく、どこか温かい記憶。
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未来の年表

河合雅司「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること」
「未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること」

  

高齢化、人口減少が進む日本社会の今後の姿を、統計を元に時系列で予測する。

2024年には3人に1人が65歳以上となり、日本は本格的に高齢者の国になる。生産年齢人口は2015~2040年の25年間で約1750万人減少し、労働力不足も深刻化していく。2033年には全国の住宅の3戸に1戸が空き家になり、2040年には自治体の半数が消滅の危機に。都市部にいるとまだ危機感が薄いが、2025年には東京でも人口が減少し始め、2045年には都民の3人に1人が高齢者となる。輸血用血液や火葬場の不足も深刻化する。

現在1億2600万人いる総人口は2065年に8800万人まで減り、2.5人に1人が高齢者となる。そう言われてもこれまでは遠い未来の話のような気がしていたが、今の小学生は2065年時点でまだ50代で、今年生まれた子は46歳。彼らは限界集落化していく社会の中を生きなくてはならない。
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なめらかな世界と、その敵

伴名練「なめらかな世界と、その敵」

SF界の新星として話題になっている著者の短編集。

表題作は、可能世界を自由に行き来することができるようになった人々が暮らす世界が舞台。並行世界や可能世界というと重厚なイメージが強いが、無数の「こうだったかもしれない世界」を飛び回る少女たちの青春を生き生きと描いている。
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この世にたやすい仕事はない

津村記久子「この世にたやすい仕事はない」

前職で燃え尽きた36歳の女性が職安で紹介された仕事を転々としていく連作短編集。「コラーゲンの抽出を見守るような仕事」というふざけた要望に対して紹介されたちょっと奇妙な五つの仕事を通じて、主人公は自分の居場所を探していく。
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