「『日本』とは何か」日本の歴史00

網野善彦「『日本』とは何か」日本の歴史00

7世紀末に生まれた「日本」は、決して農業中心の自給自足の歴史を歩んできたわけではなかった。国家という括りから離れ、「日本」の土地に住む人間の歴史を問い続けた網野善彦のエッセンスが詰った一冊。日本海を巨大な内海として捉える視点などはっとさせられる。

名著「日本の歴史をよみなおす」などに比べ、晩年の焦りか主観的な記述も目立つ。網野は間違いなくこの土地を愛していたが、日本という国政への憎悪とも言える記述には抵抗を感じる人もいるだろう。

東北学 忘れられた東北

赤坂憲雄「東北学 忘れられた東北」

近代日本と共に出発した柳田民俗学は、稲作を中心とした“瑞穂の国”として「ひとつの日本」を築く試みだった。それは東北の民とアイヌの間に強固な線引きを行い、共通性に目を閉ざした。境界を築くための「民俗学」から抜け出した時、縄文以前から人が住み、南北の文化が重なり合う東北の姿が見えてくる。

「忘れられた日本人」を著した宮本常一が晩年たどり着きつつあった“いくつもの日本”を見いだす民俗学へ。示唆に富んだ書。

日本文化の形成

宮本常一「日本文化の形成」

日本をくまなく歩いた民俗学者・宮本常一の遺稿。日本の“文化”はどこから来たのか。海を渡ってきた人たちが何を、どうもたらしたのか。

土間ではなく床に暮らす生活スタイルが海洋民の文化に由来するなど、人々の暮らしに密着してきた人間にしかできない着想が多い。未完ゆえの完成度の低さが惜しまれる。

新 忘れられた日本人

佐野眞一「新 忘れられた日本人」

伝説的な地上げ屋、蒟蒻ジャーナリスト、スケベ椅子の開発者……一時代を築きながら、歴史から忘れられつつある人たちを取り上げた短篇評伝集。

タイトルは宮本常一の名著「忘れられた日本人」から。少々大それたタイトルをつけた感があるが、面白い。