四畳半タイムマシンブルース

森見登美彦著、上田誠原案「四畳半タイムマシンブルース」

名著「四畳半神話大系」の16年ぶりの続編にして、久しぶりの“腐れ大学生”もの。といっても前作の後日譚を描くのではなく、外伝、二次創作的な内容。劇団「ヨーロッパ企画」の名作「サマータイムマシン・ブルース」を「四畳半」の世界に翻案し、おなじみのキャラがタイムマシンを巡る騒動を繰り広げる。
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紙の動物園

ケン・リュウ「紙の動物園」

さほどSFを読まない身からすると、SFと言われると、どうしても、科学、未来、宇宙、のような言葉が思い浮かぶ。そして、たまに手に取ると、その多彩さに驚かされる。サイエンスに想像力を働かせるだけでなく、サイエンスの制約から想像力を解き放ったフィクションもSFなのかもしれない。

本書は中国出身の米国人作家、ケン・リュウの日本オリジナル短編集。ベスト盤のようなものだから、面白くないわけがない。
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禅銃(ゼン・ガン)

バリントン・J・ベイリー「禅銃(ゼン・ガン)」

「カエアンの聖衣」が非常に面白かったので、同じくコアなファンの多い「禅銃」も。

反乱で崩壊に危機に瀕した帝国、他の宇宙からの干渉、究極の戦士「小姓」、小さくも強力な兵器「禅銃」――など、SFやファンタジー好きの心をくすぐる設定盛りだくさん。
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ヒッキーヒッキーシェイク

津原泰水「ヒッキーヒッキーシェイク」

引きこもりたちが、変わり者のカウンセラーの呼びかけで、「不気味の谷」を超えたバーチャルアイドル創作のプロジェクトに参加する。

荒唐無稽だが、決してスケールが大きいわけでも無い。それでもどこか惹かれる。不思議な手触りの小説。
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カエアンの聖衣

バリントン・J・ベイリー「カエアンの聖衣」

SFの楽しみの一つが壮大なホラ話の中にどっぷり浸かることだろう。本作のホラのスケールは別格。スペースオペラの風呂敷に、尖ったアイデアを、世界観と物語のテンポを損なわないぎりぎりの量まで詰め込んだ。思考実験的な作品や、科学・数学の論理を突き詰めたハードSFに対し、こうしたSF作品を「ワイドスクリーン・バロック」というようだ。
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あなたの人生の物語

テッド・チャン「あなたの人生の物語」

寡作なSF作家、テッド・チャンの短編集。表題作など8編。ファンタジー的な「バビロンの塔」から、「アルジャーノンに花束を」を連想させる「理解」、差別の問題を扱った「顔の美醜について」まで、題材、趣向はさまざまだが、科学、言語、倫理、宗教などのもたらす世界観の相剋が物語の根底にある。
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折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー

ケン・リュウ編「折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー」

今年は劉慈欣の「三体」が話題になったものの、中国のSFと言われて具体的な作品が思い浮かぶ人は多くないだろう。そもそも中国文学の邦訳は言語圏の大きさに比して極めて少ない。

本書は中国の作家のSFアンソロジー。7作家の短編13本とともに、SF論的なエッセイや各作家についての解説も収録されている。中国文学の今を伝えるとともに、SFというジャンルの幅と奥行きを示す充実した一冊となっている。
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キュー

上田岳弘「キュー」

石原莞爾の思想が語られる戦中・戦後、心療内科医の主人公が奇妙な体験をする現代、「個」が廃止された地球で現代人のGenius lul-lulがコールドスリープから目を覚ます未来の三つの時代が交互に描かれる。

効率、必然で歴史が進んでいくとしたら、人間を人間たらしめているのは、それに抗う力なのかもしれない。
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