三体X 観想之宙

宝樹「三体X 観想之宙」

古典や名作のパロディなどを除けば、二次創作でこれほど広く読まれた作品は他にないのでは。劉慈欣「地球往時」(三体)シリーズの熱心なファンが書いた続編であり、謎解き編。著者・宝樹はその後、オリジナル作品で飛躍し、現代中国を代表するSF作家の一人になっている。

三部作で残った謎にみごとな解釈をあて、特に第二部の結末から第三部への急展開における、三体文明の変化の理由と地球文明の失敗についての説明は説得力がある。

「三体」の優れた点の一つは、なぜ宇宙はこうなのか、という問いにエンタメ作品として一つの答えを提示していることだった。特に第2部「黒暗森林」、第3部「死神永生」で示される宇宙観はスリリング。「死神永生」は最後に、低次元下する宇宙の中で消滅する太陽系という壮大な光景を見せたが、本作ではさらにスケールの大きな宇宙の物語が明かされる(大きな風呂敷で包んだことで、「三体」の世界観をむしろ単純化してしまった感は否めないが)。

ハードSFとバカSFの高度な融合という印象の「三体」だったが、本作はバカSF要素が強め(ここで言うバカは壮大なホラ話ということ)。「智子」のモデルが日本の意外な人物であるという設定など、オタクによる二次創作らしい遊び心にも富んでいる。

近年読んだ小説で、純粋に面白さだけで言ったらナンバーワンは「三体」三部作。その「続編」として、本作も十分に満足いくものだった。

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