退廃姉妹

島田雅彦「退廃姉妹」

東京の裕福な家庭に育った姉妹の戦後の物語。母親を早くに亡くし、一緒に暮らしていた父親は戦犯容疑で連れて行かれてしまう。家を守るため、姉妹は自宅を米兵相手の慰安所にして生活費を稼ぐようになる。そこに特攻隊帰りの青年や、姉妹の父によって慰安所で働くことになった少女のエピソードが絡む。
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獣の奏者

上橋菜穂子「獣の奏者」

     

久しぶりにファンタジーが読みたくなったので、未読だった人気シリーズを一気読み。「I 闘蛇編」「II 王獣編」「III 探求編」「IV 完結編」「外伝 刹那」の5巻。

闘蛇と王獣という兵器になり得る力を持った生物を巡る物語。厳しい戒律で管理され、決して人に馴れぬとされてきた王獣を操る技術を身につけてしまったことで、主人公の少女は運命の奔流に巻き込まれる。闘蛇と王獣を近代兵器のメタファーとした寓話としても読めるが、エンタメ小説にそうした解釈を一々差し挟むのは無粋だろう。とにかく面白い。
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金色機械

恒川光太郎「金色機械」

時代小説×ファンタジー。珍しい組み合わせのようで、実際には漫画や娯楽小説、八犬伝などの古典から様々な民話にまでさかのぼる日本文学においては鉄板のテーマ。

危険を察知する天賦の才能に恵まれた遊廓の大旦那と、触れた者の命を奪うことが出来る能力を持った女。二人の半生を、金色様と呼ばれる(C-3POを連想させる)未来から来たアンドロイドの存在が繫ぐ。入り組んだ複数のドラマに、安直な予想を裏切る仕掛けも何度か挟まれ、先へ先へと物語はスピードを上げていく。
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あの夕陽 牧師館 日野啓三短篇小説集

日野啓三「あの夕陽 牧師館 日野啓三短篇小説集」

日野啓三の短編集。表題の二作に加えて、戦地で失踪した記者の行方を追うデビュー作の「向こう側」など全八作を収録。幼年時代を植民地の京城で過ごし、その後に新聞記者としてベトナムやソウルで特派員をしていた自らの経験を下敷きとした私的な作風ながら、そこに戦後日本で都市生活を送る虚無感のようなものが滲んでいる。
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