冒険王

平田オリザ「冒険王」

著者は16歳だった1979年、高校を休学(後に中退)して自転車で世界一周の旅に出た。イスタンブールの安宿でだらだらと喋り続けるバックパッカーたちの姿を描くこの作品には、その時の体験が反映されており、著者が自身の経験を直接題材とした唯一の戯曲でもある。1996年に初演された。
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SAVE THE CATの法則

ブレイク・スナイダー「SAVE THE CATの法則」

ハリウッドの脚本家による脚本術の本だが、優れた物語の構造分析としても読むことができ、脚本や小説だけでなく、プレゼンテーションや講演、論文執筆まで、幅広い分野のヒントになりそう。何より文章がユーモアに満ちていて、読み物としても非常に面白い。
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転校生

平田オリザ「転校生」

朝起きたら転校していることに気付き、それ以前の記憶は無くしてしまったという生徒が教室に入ってくる。劇中にも登場するカフカの作品を連想させるような不思議な展開だが、その謎を掘り下げていくわけではなく、生徒たちの日常会話がだらだらと続いていく。
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わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か

平田オリザ「わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か」

著者は、学校教育の現場や就職活動で、漠然と「コミュニケーション能力」が求められる風潮に疑問を呈しつつ、わかりあえないことを前提とした対話の基礎体力を身につける重要性を説く。コミュニケーション論というよりは、教育論というべき内容。

多様化、細分化、国際化が進んだ社会で求められるのは、「バラバラな人間が、価値観はバラバラなままで、どうにかしてうまくやっていく」こと。そこでは、「合わせる」「察する」ことよりも、最低限の社交マナーとしての対話力が必要となる。
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彼の娘

飴屋法水「彼の娘」

飴屋法水は1961年生まれ。唐十郎の状況劇場を経て劇団グランギニョルを旗揚げし、その後、現代美術の領域に移行して先鋭的な表現を次々と打ち出してきた。95年、珍獣を扱うペットショップを開き、突如表現の場から身を引いたが、近年再び活動を再開。2013年に福島県いわき市の高校生と作り上げた「ブルーシート」は岸田國士戯曲賞を受賞した。

「彼の娘」の“彼”は著者の飴屋法水自身で、“娘”は彼が45歳の時に授かった“くんちゃん”のこと。

大切なもの、大切な人は誰にでもあるが、それは主観的で個人的なものでしかない。著者の思想の根本にあるのが、どんな命も究極的には等価であるということ。娘との日々を書いた喜びに満ちた私小説でありながら、その筆は常に客観的に彼と彼女の関係を綴っていく。
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ブルーシート

飴屋法水「ブルーシート」

現代美術の領域でも活躍してきた飴屋法水の作・演出で、2013年に福島県の高校生によって上演された作品。多くの死と日常の消失を目の当たりにした高校生の“もがき”のようなものが、抽象的な断片の積み重ねと瑞々しい言葉で綴られている。第58回岸田國士戯曲賞受賞作。
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贋作・桜の森の満開の下

野田秀樹「贋作・桜の森の満開の下」

「夢の遊眠社」時代の代表作の一つ。再演を重ね、今年8月には「野田版・桜の森の満開の下」として歌舞伎化もされた。

初演は1989年。贋作(がんさく)ではなく「にせさく」と読む。ただの模倣やパロディーではなく、そこからさらにもう一歩ずれた作品であることの表明だろう。坂口安吾の「桜の森の満開の下」と「夜長姫と耳男」を下敷きとした作品だが、野田秀樹らしい言葉遊びとスピード感溢れる展開で、要約は難しい。
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シラノ・ド・ベルジュラック (光文社古典新訳文庫)

ロスタン「シラノ・ド・ベルジュラック」
渡辺守章訳 (光文社古典新訳文庫)

フランス演劇の代表作の一つで、映画、ミュージカルから翻案まで数多くの派生作品を生んだ傑作。詩人で哲学者、剣士と多才だが、容姿だけに恵まれなかった心優しき主人公シラノ・ド・ベルジュラックのキャラクターがとにかく魅力的。
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