シラノ・ド・ベルジュラック (光文社古典新訳文庫)

ロスタン「シラノ・ド・ベルジュラック」
渡辺守章訳 (光文社古典新訳文庫)

フランス演劇の代表作の一つで、映画、ミュージカルから翻案まで数多くの派生作品を生んだ傑作。詩人で哲学者、剣士と多才だが、容姿だけに恵まれなかった心優しき主人公シラノ・ド・ベルジュラックのキャラクターがとにかく魅力的。
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戦禍に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇

堀川惠子「戦禍に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と『桜隊』の悲劇」

広島で被爆し、全滅した劇団「桜隊」は、井上ひさしの「紙屋町さくらホテル」や新藤兼人監督の映画で取り上げられてきたが、いずれも原爆の悲劇としての側面が強く、なぜ彼らが広島にいたのか、その背景にある戦前・戦中の苛烈な思想統制、演劇人への弾圧については資料の不足からあまり描かれてこなかった。

著者は、桜隊の演出を手がけていた八田元夫の膨大なメモや未発表原稿を発掘し、彼の生涯を縦軸に、戦前から戦後に至る表現者たちの受難の歴史を現代によみがえらせた。
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なつかしい芸人たち

色川武大「なつかしい芸人たち」

「麻雀放浪記」の阿佐田哲也のイメージで色川武大の「狂人日記」や「百」といった小説を読むと驚かされるが、さらにこうしたエッセイを読むと、その芸能分野の造詣の深さに再び驚嘆させられる。その上で、こうして著者の人生観は育まれたのだと、読みながらストンと腑に落ちる。
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プログラム

土田英生「プログラム」

MONOの芝居はハズレがない。毎回、対話の面白さをたっぷり堪能させてくれる。しかも、ただ笑って終わりではなく、登場人物一人一人の置かれた立場やその言葉を通じて、現実の生活や社会についても振り返らされる。主宰の土田英生氏による初の小説であるこの作品も、それは変わらない。

舞台は近未来。移民が増えた日本社会に対する反動として、東京湾の人工島に“古き良き日本”の面影を残す「日本村」が作られる。そこには血統的に純粋な日本人のみが暮らすことを許され、外部からの観光客や、移民の血が混じる住民は例外として目印となるバッジの装着が命じられる。ある日、その島に設けられた“夢の次世代エネルギー”の発電所で事故が起こる。
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しんせかい

山下澄人「しんせかい」

作中では【先生】【谷】としか書かれないが、倉本聰が主宰していた「富良野塾」での日々を綴った小説。

19歳。【先生】のこともよく知らなければ、俳優になりたいという強い思いがあるわけでもない。たまたま目にした新聞記事を見て飛び込んだ【谷】は、俳優教室というよりは小さな共同体で、日々小屋作りや農作業に追われる。
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温室/背信/家族の声

ハロルド・ピンター「温室/背信/家族の声」

ハロルド・ピンターの戯曲集。難解と言われる作家だが、「背信」は純粋にドラマとして引き込まれる。不倫する男と女、その夫。ほぼ三人芝居で、関係の終わりから始まりまでの場面を時間を遡って見せていく。その過程で、誰がどこまで知っていたのかが次第に明らかになり、人間関係のさまざまな“背信”が浮き彫りになる。

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消失/神様とその他の変種

ケラリーノ・サンドロヴィッチ「消失/神様とその他の変種」

ケラリーノ・サンドロヴィッチの戯曲2本。ちょっとずれたテンポの良い会話に引き込まれる。「消失」は兄弟愛を軸に“消えること”に対する哀愁が全編に満ちた作品。活字で読むと少し感傷的すぎるかもしれないが、生身の役者を思い浮かべながら読むと胸を打つ。「神様とその他の変種」は家族の話。ナンセンスな愛憎が入り乱れて要約不可能。笑いつつ、心が毛羽立つ。作家自身が書いているように別役実的な雰囲気。

テロ

フェルディナント・フォン・シーラッハ「テロ」

注目の作家シーラッハの初戯曲。誰かを助けるために、誰かを犠牲にすることは許されるか。「トロッコ問題」などで知られる古典的な問いかけだが、テロの時代である現代、それは思考実験ではなく、現実の問題になりつつある。
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