R.E.M. 全アルバム・ガイド

R.E.M.は1980年、Michael Stipe(マイケル・スタイプ=Vo)、Peter Buck(ピーター・バック=G)、Mike Mills(マイク・ミルズ=B)、Bill Berry(ビル・ベリー=Dr)の4人によって米ジョージア州アセンズで結成。パンクやニューウェーブ、フォークなどの影響を受けつつ、オルタナティブ・ロックのシーンを切り開いた。“カレッジ・ロック”の旗手として頭角を現すと、90年代には作風を大きく広げ、世界的な人気を確立した。2011年解散。


Murmur(マーマー) 1983年

鮮烈なデビューアルバム。フォークロックやガレージロックのサウンドに曖昧なボーカルが独特の陰影を与え、独自の世界を築いている。”Radio Free Europe”がカレッジラジオでヒット。ローリングストーン誌の1983年ベストアルバムに選ばれた。


Reckoning(夢の肖像) 1984年

デビュー作より疾走感が増し、乾いたタイトなサウンドに。ライブの定番曲となった”So. Central Rain (I’m Sorry)”などを収録。バンドの人気を確固たるものに。


Fables of the Reconstruction(玉手箱) 1985年

プロデューサーにジョー・ボイドを迎え、前2作よりも内省的で陰影の濃いサウンドに挑んだ。くぐもった音像で、語りの要素の強いボーカル。初期の代表曲の一つ”Driver 8″を収録。バンドの幅を広げた飛躍の一作。


Lifes Rich Pageant (ライフズ・リッチ・ページェント) 1986年

前作とは打って変わり、プロデューサーにドン・ゲーマンを迎えてクリアなロックサウンドを追求した4thアルバム。冒頭の”Begin the Begin”から力強い曲が続く。環境問題を扱った歌詞と美しいメロディーが特徴の”Fall on Me”とともに、バンドの最高傑作と評する声もある傑作。


Dead Letter Office (デッド・レター・オフィス) 1987年

シングルのB面や未発表曲を集めたコンピレーション。Velvet Undergroundの”There She Goes Again”、”Pale Blue Eyes”、”Femme Fatale”、Aerosmithの”Toys in the Attic”といったカバー曲など、バンドの多彩な側面が詰まった一枚で、ファンは必聴。CD版には1982年のEP「Chronic Town」の5曲がボーナストラックとして収録されている。


Document (ドキュメント) 1987年

スコット・リットを共同プロデューサーに迎え、前作の路線をさらに進めたロックサウンドが特徴。過去最大のヒットとなり、初のプラチナディスクを獲得。 “The One I Love”や”It’s The End of the World as We Know It”など、バンドの歴史を語る上で欠かせない曲が収録されている。


Eponymous (エポニマス) 1988年

初のベスト盤で、I.R.S.レーベルからの最後のリリース。インディーズ時代の代表曲を網羅している。


Green (グリーン) 1988年

ワーナー・ブラザーズ移籍第1弾。”Pop Song 89″、 “Stand”、”Orange Crush”など、ポップな曲と社会的メッセージ性の強い曲が混在し、マンドリンなど新たな楽器も導入。音楽性の幅を大きく広げるとともにに、本作の名を冠したワールドツアーで国際的な地歩を固めた。


Out of Time (アウト・オブ・タイム) 1991年

全米アルバムチャートで初の1位に輝き、世界的なヒットとなった。マンドリンをはじめとするアコースティックなサウンドを基調とし、”Losing My Religion”や”Half a World Away”から”Shiny Happy People”まで多彩な曲を収録。底抜けの明るさと、内省的で陰鬱なサウンドが違和感なく共存する唯一無二の作風を確立。


The Best of R.E.M.(ザ・ベスト・オブ R.E.M.) 1991年

ワーナー移籍後に旧レーベルI.R.S.が企画したベスト盤。収録曲は「Eponymous」とほぼ共通。


Automatic for the People (オートマチック・フォー・ザ・ピープル) 1992年

バンドの最高傑作との呼び声の高い作品。”Everybody Hurts”や”Man on the Moon”など、死や喪失をテーマに据えた内省的で美しい楽曲群。 グランジ全盛の時代に、静かな叙情性で普遍的な強度を得た、90年代を代表する一枚と言っても過言ではないだろう。個人的に”Nightsimming”を繰り返し聴いた。


Monster (モンスター) 1994年

前作の静けさから一転し、歪んだエレキギターを前面に出したラウドなロックアルバム。”What’s the Frequency, Kenneth?”のリフが印象的。”Let Me In”は、早世したニルヴァーナのカート・コバーンに捧げられた曲。友人の俳優、リヴァー・フェニックスの死の衝撃から立ち直る過程で創作されたアルバムでもある。


New Adventures in Hi-Fi (ニュー・アドベンチャーズ・イン・ハイファイ) 1996年

オリジナルメンバー4人が揃った最後の作品。「Monster」のツアー中にレコーディングされた音源を核に制作され、ロードムービー的な風合いとスケールの大きさを感じさせるアルバム。パティ・スミスが参加した”E-Bow the Letter”や、美しいメロディーが印象的な”Electrolite”などを収録。


Up (アップ) 1998年

ドラマーのビル・ベリーが脱退して初のアルバム。キーボードやドラムマシンを多用し、エレクトロニカやアンビエントの要素が強くなっている。「君を笑顔にする方法を見つけた」と歌う”At My Most Beautiful”はビーチ・ボーイズへのオマージュが込められた作品で、バンド随一のラブソング。


Reveal (リヴィール) 2001年

前作の実験路線に、それまでに築いてきたバンド・サウンドを融合させた作品。”Imitation of Life”は明るい曲調の中に人生の哀歓がにじむ、まさにR.E.M.にしか作れない名曲。


In Time: The Best of R.E.M. 1988-2003 (イン・タイム) 2003年

ワーナー移籍以降のヒット曲を収めたベスト盤。未発表曲”Bad Day”、新曲”Animal”も収録。


Around the Sun (アラウンド・ザ・サン) 2004年

抑制的、内省的、全体的に陰鬱、悪く言えば地味なアルバムで、批評的にもあまり良い扱いをされないことが多い。ただ、完成度は高く、個人的にはわりと好きな一枚。R.E.M.のメロウなサウンドが好きな人なら、後期のベストともいえるのでは。”The Ascent Of Man”の”Yeah,yeah”のリフレインが耳に残る。


And I Feel Fine… The Best of the I.R.S. Years 1982-1987 2006年

インディーズ時代の音源を集大成したベスト盤。2枚組デラックス版には、未発表音源などのレアトラックを収録。


R.E.M. Live (R.E.M.ライヴ) 2007年

R.E.M.初の公式ライブ盤。2005年2月にアイルランド・ダブリンで行われたコンサートを収録した2枚組、22曲。代表曲、ライブの定番曲の多くが収められ、演奏も充実。


Accelerate (アクセラレイト) 2008年

再び前作から一転し、冒頭の”Living Well Is the Best Revenge”から疾走感あふれる骨太なロックサウンド。初期の曲調を彷彿とさせつつ、成熟も感じさせる快作。


Live at The Olympia (ライヴ・アット・ジ・オリンピア) 2009年

2007年にアイルランドのダブリンで行われた5夜連続公演から収録。2枚組、全39曲。前作ライブ盤より大ボリューム。アップテンポの曲が多く、演奏もエネルギッシュ。「Accelerate」の収録曲がここでお披露目された。


Collapse into Now (コラプス・イントゥ・ナウ) 2011年

15thアルバムで、最後のスタジオ作。過去のキャリアを総括するかのように多様なスタイルの楽曲が収録され、集大成ともいえる一枚となった。


Part Lies, Part Heart, Part Truth, Part Garbage: 1982-2011 2011年

バンド解散にあわせて企画されたベスト盤。I.R.S.時代からワーナー時代までの代表曲を網羅。新曲”We All Go Back to Where We Belong”など3曲の未発表曲も収録。


Unplugged: The Complete 1991 and 2001 Sessions 2014年

1991年と2001年に出演したMTVアンプラグドの音源をまとめた2枚組ライブ盤。33曲のうち11曲は未放送テイク。”Losing My Religion”や”Fall on Me”など、シンプルなアコースティックサウンドが楽曲の良さを際立たせている。


R.E.M. at the BBC 2018年

1984年から2008年にBBCで行ったスタジオセッションやライブ音源を集大成した8枚組ボックス。2枚組のベスト盤も同時発売された。


Bingo Hand Job/Live at the Borderline 1991 2019年

1991年にロンドンのクラブ「ボーダーライン」で、「Bingo Hand Job」という変名のもと行われたシークレット公演の模様を収録。ブートレグで知られていたステージが公式からアナログ盤限定でリリースされた。親密な雰囲気の中でのアコースティック・セット。

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