新編 越後三面山人記

田口洋美「新編 越後三面山人記」

ダムに沈んだ山人集落の記録。著者は新潟県北部、朝日連峰の山中にある三面集落に1985年の閉村直前に長期滞在し、16ミリフィルムでその生活を記録した。狩りの習俗から、採集、農耕、日常生活まで、村人の語りを中心に丁寧にまとめており、失われた山村の生活の貴重な証言となっている。
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あふりこ

川瀬慈編著「あふりこ フィクションの重奏/遍在するアフリカ」

人類学者5人の共著だが、研究報告ではなく、フィクション。

収録作は、川瀬慈「歌に震えて」「ハラールの残響」、村津蘭「太陽を喰う/夜を喰う」、ふくだぺろ「あふりか!わんだふる!」、矢野原佑史「バッファロー・ソルジャー・ラプソディー」、青木敬「クレチェウの故郷」の6編。エチオピア北部で歌を生業とする人々「ラワジ」や、西アフリカの妖術師など題材はさまざま。いずれも実験的な構成、内容で、小説、随想、散文詩などの境界を越えて、読み手を多様なアフリカの姿に誘う。
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バンコクドリーム 「Gダイアリー」編集部青春記

室橋裕和『バンコクドリーム 「Gダイアリー」編集部青春記』

「日本の恥!」と駐妻たちに目の敵にされた伝説の雑誌、という帯の文句が目を引く。1999年にバンコクで創刊された日本語月刊誌「Gダイアリー」は、ジェントルマン(紳士)の日記という名前の通りというか、裏腹にというか、夜遊びネタの豊富さで知られたが、一方で下川裕治や高野秀行といった作家の文章や硬派なルポも載る総合誌だった(らしい)。
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ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

英国の公立学校に通う息子との日々をつづったエッセイ。

著者は英国の“最底辺保育所”で働いた経験を持つライター。イエローでホワイトでもある息子は、落ち着いたカトリックの小学校に通っていたが、あえてさまざまな社会階層の子が集まる“元底辺中学校”への進学を選ぶ。その学校生活を通じて、英国社会のさまざまな問題が浮き彫りになる。同時に、教育のおいて本当に必要なことは何かを考えさせられる。
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辺境メシ ヤバそうだから食べてみた

高野秀行「辺境メシ ヤバそうだから食べてみた」

食に関する名著はいろいろあるが、そこに並ぶ(と同時に異彩を放つ)一冊と言ってもいいだろう。

ゴリラにムカデ、タランチュラと、食材もさまざまなら、ヤギの胃液のスープや、豚の生き血の和え物、ヒキガエルをミキサーにかけたジュースなど調理法も多種多様。何をどう食べるかには人間の叡智、というのは大げさかもしれないが、人間の積み重ねてきた歴史が詰まっている。登場する料理の珍しさに目が行くが、食感や風味など、丁寧かつ的確(か確かめようがないけど)な表現で、なんとなく食べた気にさせる筆力がみごと。
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ダリエン地峡決死行

北澤豊雄「ダリエン地峡決死行」

おそらく最も越えるのが難しい国境だろう。

コロンビアとパナマの国境であるダリエン地峡は密林が覆い、道らしい道も存在しない。コロンビアでは長くFARC、AUCを中心とした内戦状態が続き、国境の密林はコカインの密輸ルートにもなってきた。近年、コロンビアの治安は劇的に改善されたが、ダリエン地峡は今なお、ゲリラやマフィアが跋扈し、地雷が至る所に埋められ、戦闘や誘拐事件が続いている。
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12万円で世界を歩く

下川裕治「12万円で世界を歩く」
「12万円で世界を歩くリターンズ」

 

近年、旅の景色は大きく変化した。

名著「12万円で世界を歩く」が刊行されたのは1990年。東南アジアからアメリカ、シルクロード、ヒマラヤまで、毎回、往復航空券代含め12万円で世界各地を旅するという雑誌の企画で、著者の旅行作家としてのデビュー作でもある。
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