1991年のザイール、2012年のコンゴ。著者は、21年の歳月を隔てて、ザイール/コンゴ河の同じルートを丸木舟で旅する。一度目は夫婦で、二度目は若い研究者と。
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怪魚ウモッカ格闘記 インドへの道
ある意味、すごいノンフィクション。
デビュー作「幻獣ムベンベを追え」から未確認動物を旅の一つのテーマとしてきた著者は、あるウェブサイトで、インドの浜辺で謎の魚を見たという投稿を見つけ、インド行きを画策する。
事前調査・準備という旅の助走の描写がやけに長い。そして本の半ばを過ぎたところで最大の関門である、インドに入国できないという問題が立ち塞がる。著者は「西南シルクロードは密林に消える」でインドに密入国、強制送還されており、その記録が残っていたのだ。
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京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男
花房観音「京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男」
「ミステリーの女王」と呼ばれた山村美紗の評伝。
他の作家に京都を舞台にしたミステリーを書くことを許さなかった。広告で自分より名前が大きく掲載された作家がいると、編集者を呼び出して謝罪させた――。数々の伝説に彩られた女王の生涯を、「ふたりの男」との関係を軸に描く。
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芝居小屋戦記 神戸三宮シアター・エートーの奇跡と軌跡
菱田信也「芝居小屋戦記 神戸三宮シアター・エートーの奇跡と軌跡」
2017年4月に神戸・三宮に誕生した小劇場「神戸三宮シアター・エートー」。新築4階建てで客席数100。楽屋、シャワー室、稽古に使える多目的室なども備えている。路地裏のコインパーキングが、演劇人の理想が詰まった小劇場に生まれ変わった。
神戸を拠点に劇作家・演出家として活躍し、同劇場の芸術監督に就任した著者が、劇場設立の経緯や運営の苦労をつづったドキュメント。劇場の運営経費や自主公演の収支、失敗談なども赤裸々に盛り込んでいる。
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兄の終い
「地球の歩き方」の歩き方
黄色い表紙、青い小口塗りのガイドブックを手に初めての海外に出た人は少なくないのでは。
「地球の歩き方」は1979年創刊。海外旅行の自由化から15年が経っていたが、当時のガイドブックはパッケージツアーの参加者向けに異文化や観光地を紹介するものばかりで、移動手段や宿泊情報を載せた「歩き方」は画期的だった。
本書はその創刊に携わった4人、安松清氏、西川敏晴氏、藤田昭雄氏、後藤勇氏のインタビュー。「歩き方」の歩みは、そのまま日本の「自由旅行」「個人旅行」の歴史になっている。
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新編 越後三面山人記
ダムに沈んだ山人集落の記録。著者は新潟県北部、朝日連峰の山中にある三面集落に1985年の閉村直前に長期滞在し、16ミリフィルムでその生活を記録した。狩りの習俗から、採集、農耕、日常生活まで、村人の語りを中心に丁寧にまとめており、失われた山村の生活の貴重な証言となっている。
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津波の墓標
時間が経つにつれて、言葉が記憶となり、歴史となっていく。過去は日々再構成され、集団の記憶となる。それに抗うためには、個々の体験を残していくしかない。
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あふりこ
川瀬慈編著「あふりこ フィクションの重奏/遍在するアフリカ」
人類学者5人の共著だが、研究報告ではなく、フィクション。
収録作は、川瀬慈「歌に震えて」「ハラールの残響」、村津蘭「太陽を喰う/夜を喰う」、ふくだぺろ「あふりか!わんだふる!」、矢野原佑史「バッファロー・ソルジャー・ラプソディー」、青木敬「クレチェウの故郷」の6編。エチオピア北部で歌を生業とする人々「ラワジ」や、西アフリカの妖術師など題材はさまざま。いずれも実験的な構成、内容で、小説、随想、散文詩などの境界を越えて、読み手を多様なアフリカの姿に誘う。
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国家を食べる
名著「カラシニコフ」などで知られ、ザ・外信記者という経歴・実績を持つ著者の回顧風ノンフィクション。イラク、パレスチナ、ソマリア、エチオピアなど、食にまつわる思い出を軸に、それぞれの国家の問題とそこに生きる人々の息遣いをつづる。
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