ある意味、すごいノンフィクション。
デビュー作「幻獣ムベンベを追え」から未確認動物を旅の一つのテーマとしてきた著者は、あるウェブサイトで、インドの浜辺で謎の魚を見たという投稿を見つけ、インド行きを画策する。
事前調査・準備という旅の助走の描写がやけに長い。そして本の半ばを過ぎたところで最大の関門である、インドに入国できないという問題が立ち塞がる。著者は「西南シルクロードは密林に消える」でインドに密入国、強制送還されており、その記録が残っていたのだ。
その後の顛末は重大なネタバレになるのでふせるが、成功しなかった探検でもエンタメ性豊かな読み物としてまとめてしまう著者の力業に感服。「西南シルクロード」や「アヘン王国潜入記」、「謎の独立国家ソマリランド」といった他の誰にも出来ない旅を記録した名著以上に、著者らしい一冊といえるかもしれない。