スマホ脳

アンデシュ・ハンセン「スマホ脳」

スマートフォンは社会を変えただけでなく、人間をも変質させるかもしれない。

テレビやゲームに加え、そもそも印刷された本ですら、登場した当時は警戒された。しかし、スマホをはじめとする21世紀のデジタル端末の生活への浸透具合は、過去の様々なメディアとは比較にならない。
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21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考

ユヴァル・ノア・ハラリ「21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考」

「自由」「宗教」「戦争」など、21のテーマをめぐる考察。本書で最も(というか唯一)印象に残ったのが、大衆の存在意義がなくなる時代が迫っているという指摘。「存在意義の喪失と戦うのは、搾取と戦うよりもはるかに難しい」と著者は書く。
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旅人 ある物理学者の回想

湯川秀樹「旅人 ある物理学者の回想」

日本人として初めてノーベル賞を受賞した物理学者の、少年期から青年期までを綴った自伝。

内向的で、兄弟の中でも目立つ存在ではなかった少年が、どんな青春時代を過ごし、学問に目覚めていったのか。

文学少年だった著者は、数学や哲学などの学問に触れながら、次第に物理学への興味を深めていく。「旅人」とタイトルにあるように、時代の空気、人や本との出会い、さまざまな偶然が人を予想も付かなかった場所に運んでいく。
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ホワット・イフ? ―野球のボールを光速で投げたらどうなるか

ランドール・マンロー「ホワット・イフ? ―野球のボールを光速で投げたらどうなるか」

多彩な質問にユーモアたっぷりの回答。

著者はNASAで働いた経験を持つ理系漫画家。ウェブサイトに寄せられた「空気圧で肌を温めるにはどれくらい早く自転車をこげばいいか」「どのくらいの高度から肉を落としたらステーキが焼けるか」といった質問に、シュールなイラストを交えて、科学的知見で回答する。

たとえば、表紙に書かれている「光速の90%で野球の球を投げたら」という質問。著者によると、空気とボールの表面で核融合が起こり、球場内の空気が高温のプラズマと化す。急激な膨張と大爆発によって球場の周囲1.5km以内のすべては消え去るが、結論は「MLB規則6.08(b)によれば、この状況では、バッターは死球を受けたと判断され、1塁に進むことができるはずだ」。
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ウイルスは生きている

中屋敷均「ウイルスは生きている」

生命とは何か、について考えさせられる刺激的な1冊。

ウイルスは教科書的な知識では非生命とされる。単体で代謝機能を持たず、細胞に入らなくては増殖できない。ただ、生命とされているものにも代謝を外部環境に頼るものがあるし、生命と非生命の境界は思うほどには明確ではない。
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世界でもっとも美しい10の科学実験

ロバート・P・クリース「世界でもっとも美しい10の科学実験」

ムック本のような邦題だけど、科学史家による読み応えのある一冊。

“美”はただ整っているということだけを意味しない。優れた芸術作品は、それが絵画であっても、文学や音楽でも、世界の見え方を多少なりとも変えてしまう。それこそが美なのだとしたら、科学実験も同様に美しい。
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眠れない一族 −食人の痕跡と殺人タンパクの謎

ダニエル・T・マックス「眠れない一族 −食人の痕跡と殺人タンパクの謎」

中年期に発症し、不眠状態から死に至る「致死性家族性不眠症」。その遺伝病に代々苦しめられてきたイタリアの一族の物語を軸に、スクレイピー、BSE、クロイツフェルト・ヤコブ病、クールーなどのプリオン病の歴史と、それに迫る科学者たちの姿を描く。
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妻を帽子とまちがえた男

オリヴァー・サックス「妻を帽子とまちがえた男」

さまざまな神経疾患の症例を紹介した本。人の顔を顔として認識できなくなり(相貌失認)、タイトル通り妻を帽子と間違えるようになった男性を始め、短期の記憶が一切保持できず、何十年も前の時点で世界が止まっているコルサコフ症候群の男性や、「左」が視覚としても概念としても欠落した女性など。興味本位で読み始めたが、人間とは何か考えさせられる内容だった。
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パラレルワールド

ミチオ・カク「パラレルワールド ―11次元の宇宙から超空間へ」

宇宙論入門。始まりのゆらぎから、遥か未来の宇宙の終焉まで。量子論、相対性理論、ひも理論を丁寧に解説しつつ、SF小説や古典など大量の文芸作品を引用していて、著者の博識ぶりに驚かされる。
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脳はこんなに悩ましい

池谷裕二、中村うさぎ「脳はこんなに悩ましい」

脳の話というより、脳を糸口に遺伝子や進化、心のあり方など、色々な話を行ったり来たり。つまみ食い的な内容だけど、興味深いエピソードが山盛りで読み応えあり。池谷裕二と中村うさぎは一見不思議な組み合わせだけど、話がかなりかみ合っていてレベルの高い対談本。下ネタも思ったほど無い。