知の逆転

ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、トム・レイトン、ジェームズ・ワトソン「知の逆転」

ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックスの3人のインタビューは刺激的でとても面白い。

テクノロジーの変化が加速し、社会における高齢者の役割が不明確になってきている。資本主義という概念は空虚で、多くの新技術は経済の公共部門から生まれ、最も市場原理に純粋な金融こそ最も機能不全に陥りやすい。音楽は他の記憶よりも深く脳に残されている……などなど。

残りの3人のインタビューは、それぞれの専門分野の話にうまく切り込めていなくて少し物足りない印象。そして専門外の話は少し説教臭い。

サイエンス・インポッシブル SF世界は実現可能か

ミチオ・カク「サイエンス・インポッシブル SF世界は実現可能か」

フォースフィールド、ライトセーバー、デススター、テレポーテーション、不可視化、念力……SFに出てくる技術が実現可能か、物理学の立場から本格的に考察した一冊。永久機関と予知能力以外は物理法則には反しないとして、実現のための課題を解説している。

ほとんどの技術は莫大なエネルギーをいかに調達し、制御するかの問題につきる。後半になるにつれて科学の門外漢には少し難しくなるけど、とても刺激的な一冊。

2100年の科学ライフ

ミチオ・カク「2100年の科学ライフ」

2100年、科学はどこまで進歩し、ライフスタイルはどう変わっているか。医療やナノテクノロジー、エネルギー、宇宙開発などの分野について、現在の課題と今後の発展を考察した一冊。

シリコンに替わる素材や並列処理でムーアの法則の終焉を避けられるのか、パターン認識と常識を人工知能に盛り込むことができるのか、宇宙開発におけるコストの問題…などなど。
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人間はどこまで耐えられるのか

フランセス・アッシュクロフト「人間はどこまで耐えられるのか」

人間はどこまで高く、深く、暑く、寒く、速く…。

タイトルはともかく、内容は硬派な生理学の本。人間の挑戦と科学者による検証の歴史を振り返りつつ、身体の仕組みを、減圧症や高山病、熱中症の仕組みなどを交えて詳しく解説し、人間の限界を探る。
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宇宙は本当にひとつなのか ―最新宇宙論入門

村山斉「宇宙は本当にひとつなのか ―最新宇宙論入門」

暗黒物質とは。異次元とは。宇宙の何が分かっていて、何が謎なのか。非常に分かりやすく読みやすい一冊。

知識は無いけど、時々この手の本が無性に読みたくなる。著者の「宇宙の研究をしているととても謙虚な気持ちになります」との言葉通り、スケールの大きさに日常の些事がどうでも良くなる。精神安定剤にも。

世界の放射線被曝地調査

高田純「世界の放射線被曝地調査 ―自ら測定した渾身のレポート」

ルポのようで読み物として面白い。セミパラチンスクなどは有名だが、他にもこれほどの被曝地が地球上にあるというのが結構な衝撃。

「結果を住民に知らせることが調査の基本的ルールである」

今、福島県内に調査に入っている学者や市民団体に聞かせてやりたい。

朽ちていった命 ―被曝治療83日間の記録

NHK取材班「朽ちていった命 ―被曝治療83日間の記録」

99年のJCO臨界事故の、事故そのものではなく被曝医療の記録。染色体が壊れ、徐々に人が“朽ちて”いく様子が克明に記されている。医療現場の凄絶さを感じると共に、人の設計図が壊れてしまった時、どんな技術を持ってしてもなす術がない無力感。

原子炉を眠らせ、太陽を呼び覚ませ

森永晴彦「原子炉を眠らせ、太陽を呼び覚ませ」

戦時中から原子核物理学に携わってきた研究者の14年前の提言。原子力の平和利用に理解を示しつつ、脱原発の道を探る。

太陽光という結論はいまや理想主義的すぎる気もするが、日本の原子力防災の甘さの指摘など、JCO事故以前の執筆とは思えない。

宇宙論入門 ―誕生から未来へ

佐藤勝彦「宇宙論入門 ―誕生から未来へ」

新書で入門と付くのは大抵コラム程度の内容で買って損したと思うけど、これは丁寧な仕事。

宇宙スケールの話を考えていると、仕事とか日常の些事なんかどうでも良いやって気分になる。