宮本常一を旅する

木村哲也「宮本常一を旅する」

宮本常一の足跡を訪ねる旅。ただの紀行文ではなく、宮本民俗学を補い、現代につなぐ優れた仕事。

宮本は民俗学者であると同時に稀代の旅人でもあり、優れた農業・地域振興指導者の顔も持っていた。宮本が何を記録し、同時にそれぞれの土地に何を残していったのか。著者は宮本の膨大な資料を読み込んだ上で各地を回り、宮本が見たもの、見残したものを探っていく。
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辺境を歩いた人々

宮本常一「辺境を歩いた人々」

日本では、探検家といってもあまり具体的な名前が浮かばない人が多いかもしれない。小さな島国で、未踏の地、未知の地とはあまり縁がなかったようなイメージがあるが、実際には多くの探検家や旅行者が辺境を調査し、“国土”を切り開いてきた。

流刑先の八丈島で「八丈実記」という詳細な地誌を残した近藤富蔵。東北を歩き、民衆の生活誌を細かく記した菅江真澄。蝦夷地の内陸部を踏査した松浦武四郎。南西諸島と千島列島の調査に先鞭を付けた笹森儀助。4人の半生を中心に、辺境を歩いた先人の業績を語る。
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性・差別・民俗

赤松啓介「性・差別・民俗」

赤松啓介は1909年生まれ。左翼運動で投獄された経験を持つ反骨の民俗学者。本書は「非常民の民俗境界」として88年に刊行されたもので、性風俗、祭り、民間信仰を中心としたエッセイ風の論考集。

名著「夜這いの民俗学」などでお馴染みの夜這いの話題から、祭りや民間信仰と性の解放の密接な関係など、内容は多岐にわたる。その根底に、既存の民俗学への不満と、学問の名を借りて共同体を体系化、組織化しようとする国家や権力への不信がある。
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宮本常一と土佐源氏の真実

井出幸男「宮本常一と土佐源氏の真実」

宮本常一が記した文章で最も有名な「土佐源氏」。老博労の聞き書きで、前近代の庶民の性に関する民俗学資料として評価されてきたが、そこに創作、脚色が混ざっていることも以前から指摘されてきた。著者は、宮本常一の若き日の恋愛遍歴にまで踏み込んで、土佐源氏に投影された宮本自身の体験を探っていく。
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山怪 山人が語る不思議な話

田中康弘「山怪 山人が語る不思議な話」

阿仁のマタギから、四国、九州の猟師まで、山に生きる人々から聞き取った山中での不思議な話。表紙は少しおどろおどろしいが、怪談や民話として脚色・完成されたものではなく、シンプルな体験談集。謎の光や音、声、神隠し、延々と続く道、突如迷い込んだ不思議な空間……。特にオチも無い極々短い話ばかりだが、とてもリアル。現代でも人影の絶えた山奥に入れば、人里とは違う空気を感じる。科学的には錯覚や神経症のようなものかもしれないが、つい最近まで、狐や狸に化かされてしまう空間は確かに存在したのだろう。

遠野物語remix

京極夏彦「遠野物語remix」

京極夏彦が遠野物語を現代語にしてリミックス。原文が平易で現代語訳があまり必要無い作品だが、並び替えと意訳で読みやすくなっている。一方、京極夏彦の特徴的な文体が、小説、フィクションの雰囲気を強くしてしまっているきらいもある。それでも、人と自然の関係が密接で、理解できない世界が日常のすぐ隣に横たわっている感覚、こうした世界に人は生きてきたのだろうと感じさせる原作の強い力は失われていない。

盆踊り 乱交の民俗学

下川耿史「盆踊り 乱交の民俗学」

副題にあるように盆踊りの発生を巡る考察を通じて乱交の歴史を紐解く。歌垣や雑魚寝という性の場と、芸能の起源としての風流(ふりゅう、現代の「風流」ではなく、侘び寂びに対峙する奇抜な美意識)、それらはやがて村落共同体で盆踊りへと洗練されていく。しかし、明治に入ると盆踊りは禁止され、同時に性の世界は日常生活の表舞台から消えてしまった。
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