性・差別・民俗

赤松啓介「性・差別・民俗」

赤松啓介は1909年生まれ。左翼運動で投獄された経験を持つ反骨の民俗学者。本書は「非常民の民俗境界」として88年に刊行されたもので、性風俗、祭り、民間信仰を中心としたエッセイ風の論考集。

名著「夜這いの民俗学」などでお馴染みの夜這いの話題から、祭りや民間信仰と性の解放の密接な関係など、内容は多岐にわたる。その根底に、既存の民俗学への不満と、学問の名を借りて共同体を体系化、組織化しようとする国家や権力への不信がある。
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宮本常一と土佐源氏の真実

井出幸男「宮本常一と土佐源氏の真実」

宮本常一が記した文章で最も有名な「土佐源氏」。老博労の聞き書きで、前近代の庶民の性に関する民俗学資料として評価されてきたが、そこに創作、脚色が混ざっていることも以前から指摘されてきた。著者は、宮本常一の若き日の恋愛遍歴にまで踏み込んで、土佐源氏に投影された宮本自身の体験を探っていく。
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山怪 山人が語る不思議な話

田中康弘「山怪 山人が語る不思議な話」

阿仁のマタギから、四国、九州の猟師まで、山に生きる人々から聞き取った山中での不思議な話。表紙は少しおどろおどろしいが、怪談や民話として脚色・完成されたものではなく、シンプルな体験談集。謎の光や音、声、神隠し、延々と続く道、突如迷い込んだ不思議な空間……。特にオチも無い極々短い話ばかりだが、とてもリアル。現代でも人影の絶えた山奥に入れば、人里とは違う空気を感じる。科学的には錯覚や神経症のようなものかもしれないが、つい最近まで、狐や狸に化かされてしまう空間は確かに存在したのだろう。

海に生きる人びと

宮本常一「海に生きる人びと」

広い国名が書かれていたという印象的なエピソードから始まる、宮本常一による日本民衆史の一冊。漁労に従事しながら移動を続けた海の民の歴史。ある者は塩焼きなど生業の転換で、ある者は支配権力による加子浦の編成にともなって各地に定住していった。移動する民は文字を持たず、歴史は定住民の立場から語られる。海に生きた足跡は地名や伝承に一部残っているに過ぎない。 今どき日本人が農耕民族と言い切る人も少ないだろうが、 瀬戸内海から九州以西にかけての海民の動きから列島を見ると、孤立した島国とは全く違うイメージが立ち上がる。

遠野物語remix

京極夏彦「遠野物語remix」

京極夏彦が遠野物語を現代語にしてリミックス。原文が平易で現代語訳があまり必要無い作品だが、並び替えと意訳で読みやすくなっている。一方、京極夏彦の特徴的な文体が、小説、フィクションの雰囲気を強くしてしまっているきらいもある。それでも、人と自然の関係が密接で、理解できない世界が日常のすぐ隣に横たわっている感覚、こうした世界に人は生きてきたのだろうと感じさせる原作の強い力は失われていない。

盆踊り 乱交の民俗学

下川耿史「盆踊り 乱交の民俗学」

副題にあるように盆踊りの発生を巡る考察を通じて乱交の歴史を紐解く。歌垣や雑魚寝という性の場と、芸能の起源としての風流(ふりゅう、現代の「風流」ではなく、侘び寂びに対峙する奇抜な美意識)、それらはやがて村落共同体で盆踊りへと洗練されていく。しかし、明治に入ると盆踊りは禁止され、同時に性の世界は日常生活の表舞台から消えてしまった。
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景観写真論ノート 宮本常一のアルバムから

香月洋一郎「景観写真論ノート 宮本常一のアルバムから」

宮本常一が撮った風景写真と、その景観を読み解いたメモをまとめた本。

田畑の形がどうなっているか、住家が密集しているか、分散しているか、山肌に何の木が植えられているか…景観にはその土地に生きた人々の暮らしの歴史が刻まれている。大学生の時に宮本の「空からの民俗学」を読んでそのことに気付かされて以来、景色を見る目が多少なりとも変わった。その宮本のまなざしがよく分かる一冊。
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性風土記

藤林貞雄「性風土記」

古本で購入。“性”の遠野物語。

記録に残らないぶん、より不変なものと考えられがちな性風俗。この本の出版は昭和の半ば、紹介されている習俗は昭和初期に記録されたものが中心だが、旅人に身内を夜伽に出す貸妻、意味不明な柿の木問答など、現代からすればかなり衝撃的なものばかり。
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