治安維持法を巡る連作短編集。
「雲雀」「叛徒」「虐殺」「矜恃」の4編で、それぞれ、プロレタリア文学の旗手・小林多喜二、反戦川柳作家・鶴彬、「横浜事件」で弾圧された言論誌の編集者ら、哲学者・三木清を物語の中心に据えている。スパイ小説「ジョーカー・ゲーム」の著者らしく、罪を仕立て上げようとする官憲と、表現者の息詰まる心理戦が描かれる。
“アンブレイカブル” の続きを読む
読んだ本の記録。
治安維持法を巡る連作短編集。
「雲雀」「叛徒」「虐殺」「矜恃」の4編で、それぞれ、プロレタリア文学の旗手・小林多喜二、反戦川柳作家・鶴彬、「横浜事件」で弾圧された言論誌の編集者ら、哲学者・三木清を物語の中心に据えている。スパイ小説「ジョーカー・ゲーム」の著者らしく、罪を仕立て上げようとする官憲と、表現者の息詰まる心理戦が描かれる。
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タイトルの伏せ字も読者への挑戦。さまざまな趣向を懲らしたミステリー。
南の島でのオフ会で殺人事件が起こる。クローズドサークルもののど真ん中のシチュエーションだが、後半で謎が明らかになるにつれて、突っ込みどころがどんどん湧いてくる。核となるトリックにも苦笑い。でも、この馬鹿馬鹿しさは嫌いじゃない。
<以下ややネタバレ>
“○○○○○○○○殺人事件” の続きを読む
探偵リュウ・アーチャーシリーズの第12作で、最高傑作と言われることも多い「さむけ」。原題は”The Chill”。
物語は、結婚直後に失踪した妻の捜索願いから始まる。やがて殺人事件が起こり、そこに過去の二つの殺人事件が絡む。
“さむけ” の続きを読む
戦後まもない時期の大阪にあった大阪市警視庁を舞台とした警察小説。民主警察の理想と現実、戦争の残した傷、そしてそれらを乗り越えて生きようとする人々の姿が描かれている。
“インビジブル” の続きを読む
短編小説というよりショートショートという印象の、短くも切れ味鋭い13編。表題作は、ナポレオンゆかりの品のコレクターに、自分をナポレオンの生まれ変わりと信じている男を引き合わせる話。ブラックユーモアに富んだ一編。
“ナポレオン狂” の続きを読む
ロートレックが多数飾られた別荘で起こる殺人事件。
ロートレックの作品が随所に挿まれ物語を彩るとともに、人物描写に著者らしいユーモアがあり、人間模様の面白さに引き込まれる。
最後に明かされるミステリーとしての仕掛けについては、フェアかアンフェアか意見が分かれそう。
“ロートレック壮事件” の続きを読む
ゾンビに囲まれた湖畔のペンションで殺人事件が起こる。パニックホラーと本格ミステリーの見事な融合。
本格ミステリーは謎解きが肝である以上、ファンタジーや非現実的な要素を入れると興醒めになりかねない。一方で、話が面白ければ細かなことは気にならないのも小説。本作はとにかく面白い。
“屍人荘の殺人” の続きを読む
学園ホラー×本格ミステリーの「Another」(2009年)、「Another エピソードS」(13年)に続くシリーズ最新作。前2作の3年後、おなじみの夜見山北中学を舞台に、スケールアップした“災厄”が登場人物たちを襲う。人気作の続編だが、期待を裏切らない面白さ。800ページ超を一息に読み終えた。
ホラー作品には、現実離れした設定がつきもの。そこで「あり得ない」と興醒めになるものもあれば、あり得ないからこそ想像力が刺激されることもある。「Anotherなら死んでた」がネットスラングとして流行った本シリーズは、まさに後者だろう。「死に引き込まれやすくなる」という“災厄”の設定が秀逸。
“Another2001” の続きを読む
花房観音「京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男」
「ミステリーの女王」と呼ばれた山村美紗の評伝。
他の作家に京都を舞台にしたミステリーを書くことを許さなかった。広告で自分より名前が大きく掲載された作家がいると、編集者を呼び出して謝罪させた――。数々の伝説に彩られた女王の生涯を、「ふたりの男」との関係を軸に描く。
“京都に女王と呼ばれた作家がいた 山村美紗とふたりの男” の続きを読む