告白

湊かなえ「告白」

救いようのない話だが、スピード感があって最後まで引き込まれて読んだ。一人一人が交替で事件とその後を語る、そこに微妙なずれがあって、真実が分からなくなるあたり、芥川の「藪の中」のような雰囲気。

ただ、物語の道具としてのエイズの扱い方はちょっと悪趣味だと感じた。

黒い家

貴志祐介「黒い家」

ぞっとする怖さではなく、緊張感と嫌な感じが続く。ホラーというより、サスペンスとして一級品。クライマックスの場面は、日本のエンタメ小説史に残る恐ろしさ。

ただ、最後、生保の闇を人間社会に広げるのは極端だし、兄の呪縛から解放されるくだりは、そこまでの丁寧な物語運びからすれば、あっけない印象。

しゃばけ

畠中恵「しゃばけ」

虚弱体質の若だんなと妖怪が殺人事件の解決に挑む。ちょっとミステリ調で、妖怪が自然に物語にとけ込んでいるあたり、良い感じの和風ファンタジー。

ただ内容の割に文体が平淡すぎるのが、ちょっと物足りないかも。

葉桜の季節に君を想うということ

歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」

中途半端にきざな文章が鼻について前半は読み進めるのが苦痛だったが、それも含めて大がかりな叙述トリックは見事としか言いようがない。全体的に仕掛けのために物語を組み立てたような不自然さは否めないが、叙述トリックの大傑作。

八つ墓村

横溝正史「八つ墓村」

もはや古典だが、松本清張より古さを感じさせない。 田舎の閉鎖的な雰囲気と、物語そのものに引き込まれる。漫画でも、ドラマや映画でも、この作品のオマージュというべきものがたくさんあるが、原点にして完璧。