「ケア」という言葉が最近よく聞かれるようになったが、それはこれまでの社会において、いかにケアという営為が軽んじられてきたかの裏返しだろう。近代社会では経済的・精神的な「自立」が重んじられ、他者に配慮し、関係性を結ぶ「ケア」の営為は軽視されてきた(その上で、介護や育児などのケア労働は女性などの弱い立場に押し付けられてきた)。
社会・経済活動の中でケアの価値観が軽視されたことは、文学作品の読解にも影響を与えていたのではないか。著者は「ケア」の視点から古今東西の文学作品を読み解き、近代的な価値観のもとで見過ごされてきた要素を丁寧に拾い上げていく。
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