21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考

ユヴァル・ノア・ハラリ「21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考」

「自由」「宗教」「戦争」など、21のテーマをめぐる考察。本書で最も(というか唯一)印象に残ったのが、大衆の存在意義がなくなる時代が迫っているという指摘。「存在意義の喪失と戦うのは、搾取と戦うよりもはるかに難しい」と著者は書く。

グローバル化と経済発展は世界を平準化し平等に寄与すると考えられていたが、実際には巨大資本による搾取と不平等を拡大した。AIの発達は、そこからさらに大衆の存在意義そのものを奪うかもしれない。近代以降の社会において大衆は、労働力としても、兵士としても必要とされたが、今や消費者としての価値しかなくなりつつあり、さらに消費者としての存在感もAIで消費行動が左右されるようになれば、薄れてしまう。

21のテーマをめぐる著者の考察は大ボリュームだが、突き詰めて言えば、AIや、人間の本質的な愚かさにあらがうために我々が心がけることは、自分自身を知ること――自分自身がままならないということも含めて――につきるだろう。

著者の「サピエンス全史」が面白かったので買ったものの(「ホモ・デウス」は未読)、「サピエンス全史」で得られたような知的な刺激は薄く、後半にいくに連れて、まわりくどい上に結論のない自己啓発書のような内容になっていったのが残念。

最後に一つ、ナショナリズムについての著者の言葉が非常に的確だと思ったので引用。偏狭な排外主義こそ、社会の未来を奪う。

「グローバリズムと愛国心との間には、何の矛盾もない。なぜなら愛国心とは、外国人を憎むことではないからだ。愛国心は同国人の面倒を見ることを意味する。そして二一世紀には、同国人の安全と繁栄を守るためには、外国人と協力しなければならない。だから、良きナショナリストは今や、グローバリストであるべきなのだ」

 

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