大学の修士課程の2年間。ハッテン場に出入りしながら、大学の仲間や指導教員とのやりとりの中で自分を探し、デッドラインに向けてもがく日々が綴られる。
短い断片を積み重ねていく展開はやや散漫だが、そもそも青春とは散漫なものだ。
青春小説やビルドゥングスロマンというと、テーマは自己実現や自分探し、その題材はスポーツだったり、恋愛だったりすることが多い(最近は)。モースやドゥルーズやガタリの話題が出てくることはあまりない。でも、そういう青春を送った人だって決して少なくない。思想や哲学は、スポーツや恋愛以上に自分を見つめるためのツールなのだから。
屈託を抱えた不器用な文系大学院生の、ありそうで無かった青春小説。かなり心に響く人もいるのでは。