12万円で世界を歩く

下川裕治「12万円で世界を歩く」
「12万円で世界を歩くリターンズ」

 

近年、旅の景色は大きく変化した。

名著「12万円で世界を歩く」が刊行されたのは1990年。東南アジアからアメリカ、シルクロード、ヒマラヤまで、毎回、往復航空券代含め12万円で世界各地を旅するという雑誌の企画で、著者の旅行作家としてのデビュー作でもある。
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日本の中のインド亜大陸食紀行

小林真樹「日本の中のインド亜大陸食紀行」

インドの食文化について書かれた紀行本やレシピ本は珍しくないが、本書のテーマは“日本の中のインド食文化”。アジア食器などの輸入販売を手がけている著者は、各地のインド料理店や食材店を巡り、異国に根付き、変化していく食文化を追う。
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紀州 木の国・根の国物語

中上健次「紀州 木の国・根の国物語」

「紀伊半島は海と山と川の三つの自然がまじりあったところである。平野はほとんどない。駅一つへだてるとその自然のまじり具合がことなり、言葉が違い、人の性格は違ってくる」

「海からの潮風が間断なく吹きつけるこの枯木灘沿岸で、作物のほとんどは育たない。木は枯れる。(中略)潮風を受けて崖に立っていると、自分が葉を落とし枝が歪み、幹の曲がった樹木のような気がしてくる」
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南の島でえっへっへ

おがわかずよし「南の島でえっへっへ」

 

インドや東南アジアは多くの紀行本が出版されているし、バックパッカーの体験談を綴ったブログの類も沢山ある。欧米やアフリカも書籍では身近な地域だ。一方で太平洋の島々を扱った読み物は非常に少なく、バックパッカー目線の紀行本は皆無に近い。太平洋は貧乏旅行者にとっては広大な空白地帯であり、ほとんど語られることがなかった。
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旅ときどき沈没

蔵前仁一「旅ときどき沈没」

 

一箇所に長逗留することをバックパッカーの間で沈没というが、かつてはインドや東南アジアの安宿に何ヶ月も滞在して、日がな一日何をするでもなく過ごしているような人が何人もいた。沈没にも程度があって、旅の合間に沈没する人と、沈没の合間に旅(というより移動)をする人がいて、後者は物価の上昇などで最近は絶滅危惧種になりつつあるようだ。

本書は1994年刊。80年代後半~90年代前半の旅を中心に、アジアからアフリカまで旅先で出会った人々の話がイラスト付きで紹介されている。移動しなければ見られない景色があるように、一箇所に留まることで出会う人や光景がある。
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ジュライホテルのポーム

吉倉槇一「ジュライホテルのポーム」

自分は06年に初めてバンコクを訪れたので、ヤワラー(中華街)が日本人の溜まり場だった時代は知らない。90年代半ばを過ぎると、欧米人が先行して集まっていたカオサン通りに日本人バックパッカーも吸収され、ヤワラーに滞在する日本人は減った。

ヤワラーには楽宮大旅社、台北旅社といった有名な安宿が何軒かあったが、その中でも特に日本人旅行者に人気が高かったのがジュライホテルで、ポーム(ポンちゃん)はその象徴的な存在だったという。
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