「地球の歩き方」の歩き方

山口さやか、山口誠『「地球の歩き方」の歩き方』

黄色い表紙、青い小口塗りのガイドブックを手に初めての海外に出た人は少なくないのでは。

「地球の歩き方」は1979年創刊。海外旅行の自由化から15年が経っていたが、当時のガイドブックはパッケージツアーの参加者向けに異文化や観光地を紹介するものばかりで、移動手段や宿泊情報を載せた「歩き方」は画期的だった。

本書はその創刊に携わった4人、安松清氏、西川敏晴氏、藤田昭雄氏、後藤勇氏のインタビュー。「歩き方」の歩みは、そのまま日本の「自由旅行」「個人旅行」の歴史になっている。
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ガンジス河でバタフライ

たかのてるこ「ガンジス河でバタフライ」

20歳女子の一人旅。香港、シンガポール、マレーシア、インド。刊行は2000年だが、綴られている旅は90年代の初めのもの。ベストセラーで、テレビドラマ化されたこともあって、著者は女性バックパッカーのアイコンのようなイメージを築いた。
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あふりこ

川瀬慈編著「あふりこ フィクションの重奏/遍在するアフリカ」

人類学者5人の共著だが、研究報告ではなく、フィクション。

収録作は、川瀬慈「歌に震えて」「ハラールの残響」、村津蘭「太陽を喰う/夜を喰う」、ふくだぺろ「あふりか!わんだふる!」、矢野原佑史「バッファロー・ソルジャー・ラプソディー」、青木敬「クレチェウの故郷」の6編。エチオピア北部で歌を生業とする人々「ラワジ」や、西アフリカの妖術師など題材はさまざま。いずれも実験的な構成、内容で、小説、随想、散文詩などの境界を越えて、読み手を多様なアフリカの姿に誘う。
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深夜航路 午前0時からはじまる船旅

清水浩史「深夜航路 午前0時からはじまる船旅」

「深夜航路」というタイトルだけで旅情をかき立てられる。

夜行フェリーほど、旅をしている、という感覚を味わわせてくれる乗り物はない。フェリーに限らず、列車でもバスでも夜行には不思議な魅力がある。景色が見えないのになぜ旅の感慨がわくのか。そして、昼間の移動より記憶に残っていることが多いのはなぜだろう。

景色が見えないからこそ、なのかもしれない。著者も書いているように、夜の旅は内省的になる。内省する時間は自由の感覚とも結びついている。
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バンコクドリーム 「Gダイアリー」編集部青春記

室橋裕和『バンコクドリーム 「Gダイアリー」編集部青春記』

「日本の恥!」と駐妻たちに目の敵にされた伝説の雑誌、という帯の文句が目を引く。1999年にバンコクで創刊された日本語月刊誌「Gダイアリー」は、ジェントルマン(紳士)の日記という名前の通りというか、裏腹にというか、夜遊びネタの豊富さで知られたが、一方で下川裕治や高野秀行といった作家の文章や硬派なルポも載る総合誌だった(らしい)。
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辺境メシ ヤバそうだから食べてみた

高野秀行「辺境メシ ヤバそうだから食べてみた」

食に関する名著はいろいろあるが、そこに並ぶ(と同時に異彩を放つ)一冊と言ってもいいだろう。

ゴリラにムカデ、タランチュラと、食材もさまざまなら、ヤギの胃液のスープや、豚の生き血の和え物、ヒキガエルをミキサーにかけたジュースなど調理法も多種多様。何をどう食べるかには人間の叡智、というのは大げさかもしれないが、人間の積み重ねてきた歴史が詰まっている。登場する料理の珍しさに目が行くが、食感や風味など、丁寧かつ的確(か確かめようがないけど)な表現で、なんとなく食べた気にさせる筆力がみごと。
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ダリエン地峡決死行

北澤豊雄「ダリエン地峡決死行」

おそらく最も越えるのが難しい国境だろう。

コロンビアとパナマの国境であるダリエン地峡は密林が覆い、道らしい道も存在しない。コロンビアでは長くFARC、AUCを中心とした内戦状態が続き、国境の密林はコカインの密輸ルートにもなってきた。近年、コロンビアの治安は劇的に改善されたが、ダリエン地峡は今なお、ゲリラやマフィアが跋扈し、地雷が至る所に埋められ、戦闘や誘拐事件が続いている。
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宮本常一を旅する

木村哲也「宮本常一を旅する」

宮本常一の足跡を訪ねる旅。ただの紀行文ではなく、宮本民俗学を補い、現代につなぐ優れた仕事。

宮本は民俗学者であると同時に稀代の旅人でもあり、優れた農業・地域振興指導者の顔も持っていた。宮本が何を記録し、同時にそれぞれの土地に何を残していったのか。著者は宮本の膨大な資料を読み込んだ上で各地を回り、宮本が見たもの、見残したものを探っていく。
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12万円で世界を歩く

下川裕治「12万円で世界を歩く」
「12万円で世界を歩くリターンズ」

 

近年、旅の景色は大きく変化した。

名著「12万円で世界を歩く」が刊行されたのは1990年。東南アジアからアメリカ、シルクロード、ヒマラヤまで、毎回、往復航空券代含め12万円で世界各地を旅するという雑誌の企画で、著者の旅行作家としてのデビュー作でもある。
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