京都のおねだん

大野裕之「京都のおねだん」

本来、モノやサービスの値段は、売り手と買い手との関係性や、その時々の状況などさまざまな要因で決まる。言い換えれば、値段はそこに多様な情報を含んでいる。

近代化と共に値段の付け方は均質化され、一律に提示することが難しい“よく分からない値段”が敬遠されるようになってきたが、京都にはまだ一部にそうした“おねだん”が残っている。チャプリンの研究者である著者は、京都に住んで20年あまりの「京都人見習い」。ゲーム感覚で京都という多様な顔を持つ社会に分け入っていく。
“京都のおねだん” の続きを読む

縮小ニッポンの衝撃

NHKスペシャル取材班「縮小ニッポンの衝撃」

2017年に発表された推計では、今後半世紀で日本の人口は約3900万人減り、2065年に8808万人になるという。2025年には5人に1人が75歳以上という超高齢社会に突入し、同時に東京でも人口が減少に転じる。2010年時点で人が住んでいた地点の約2割が2050年までに無住化するという推計もあり、日本社会は確実に縮小していく。

本書は2016年にNHKスペシャルで放送された内容を書籍化したもの。冒頭で、地方の過疎の影に隠れがちな東京の課題が明らかにされている。
“縮小ニッポンの衝撃” の続きを読む

て/夫婦

岩井秀人「て/夫婦」

ハイバイの「て」を初めて観た時は衝撃を受けた。家族の複雑な感情も、過去のトラウマも、何気ない会話も、一旦舞台に上げてしまえば全てひっくるめて喜劇になるのだと知り、その視点はある種の救いにもなった。もちろん小説でも映画でも「家族」は定番の主題だが、生身の人間の演じる舞台で日常の中の愛憎を見せつけられることほど生々しいものはない。

「て」は祖母の死を巡る物語で、次男の視点と母の視点で同じ時間軸を二度繰り返す。その中で家族それぞれの抱える複雑な感情が浮き彫りになる。「夫婦」は家族に深い傷を負わせた父が死に、家族の過去が語られる。いずれも可笑しくも胸を締め付けられる作品。
“て/夫婦” の続きを読む

工学的ストーリー創作入門/物理学的ストーリー創作入門

ラリー・ブルックス「工学的ストーリー創作入門」「物理学的ストーリー創作入門」

 

著者は、考えながら書き、書き直しを重ねる手法(パンツィング)を否定し、物語にも原則があると繰り返し述べる。アウトラインを固めずに書いている作家でも、無意識にその原則に従っているのだと。その上でストーリーを構成するものを「コンセプト」「人物」「テーマ」「構成」「シーンの展開」「文体」の六つのコア要素に分け、それぞれにおける逆らうことができない物理法則を解説する。
“工学的ストーリー創作入門/物理学的ストーリー創作入門” の続きを読む