百年と一日

柴崎友香「百年と一日」

33の物語。いずれも短編というより掌編の短さだが、まずタイトルの長さが目を引く。

冒頭に収められているのが「一年一組一番と二組一番は、長雨の夏に渡り廊下のそばの植え込みできのこを発見し、卒業して二年後に再会したあと、十年経って、二十年経って、まだ会えていない話」。
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食べ歩くインド

小林真樹「食べ歩くインド」北・東編 南・西編

 

すごい本である。インドの多様な食を紹介――といっても、研究者による食文化論ではない。タイトル通り、全インドを食べ歩くためのグルメガイド。かなり分かりやすく書かれているが、それでもニハーリーやクルチャーなどなじみのない言葉が次々と出てきて、文章を読みながら、異文化の中を旅している気分になる。「北・東編」「南・西編」の2分冊でボリュームたっぷり。旅行人の情報量の多いガイドブックを開いた時の興奮を思い出した。
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紙の動物園

ケン・リュウ「紙の動物園」

さほどSFを読まない身からすると、SFと言われると、どうしても、科学、未来、宇宙、のような言葉が思い浮かぶ。そして、たまに手に取ると、その多彩さに驚かされる。サイエンスに想像力を働かせるだけでなく、サイエンスの制約から想像力を解き放ったフィクションもSFなのかもしれない。

本書は中国出身の米国人作家、ケン・リュウの日本オリジナル短編集。ベスト盤のようなものだから、面白くないわけがない。
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「地球の歩き方」の歩き方

山口さやか、山口誠『「地球の歩き方」の歩き方』

黄色い表紙、青い小口塗りのガイドブックを手に初めての海外に出た人は少なくないのでは。

「地球の歩き方」は1979年創刊。海外旅行の自由化から15年が経っていたが、当時のガイドブックはパッケージツアーの参加者向けに異文化や観光地を紹介するものばかりで、移動手段や宿泊情報を載せた「歩き方」は画期的だった。

本書はその創刊に携わった4人、安松清氏、西川敏晴氏、藤田昭雄氏、後藤勇氏のインタビュー。「歩き方」の歩みは、そのまま日本の「自由旅行」「個人旅行」の歴史になっている。
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