紙の動物園

ケン・リュウ「紙の動物園」

さほどSFを読まない身からすると、SFと言われると、どうしても、科学、未来、宇宙、のような言葉が思い浮かぶ。そして、たまに手に取ると、その多彩さに驚かされる。サイエンスに想像力を働かせるだけでなく、サイエンスの制約から想像力を解き放ったフィクションもSFなのかもしれない。

本書は中国出身の米国人作家、ケン・リュウの日本オリジナル短編集。ベスト盤のようなものだから、面白くないわけがない。
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「地球の歩き方」の歩き方

山口さやか、山口誠『「地球の歩き方」の歩き方』

黄色い表紙、青い小口塗りのガイドブックを手に初めての海外に出た人は少なくないのでは。

「地球の歩き方」は1979年創刊。海外旅行の自由化から15年が経っていたが、当時のガイドブックはパッケージツアーの参加者向けに異文化や観光地を紹介するものばかりで、移動手段や宿泊情報を載せた「歩き方」は画期的だった。

本書はその創刊に携わった4人、安松清氏、西川敏晴氏、藤田昭雄氏、後藤勇氏のインタビュー。「歩き方」の歩みは、そのまま日本の「自由旅行」「個人旅行」の歴史になっている。
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カエアンの聖衣

バリントン・J・ベイリー「カエアンの聖衣」

SFの楽しみの一つが壮大なホラ話の中にどっぷり浸かることだろう。本作のホラのスケールは別格。スペースオペラの風呂敷に、尖ったアイデアを、世界観と物語のテンポを損なわないぎりぎりの量まで詰め込んだ。思考実験的な作品や、科学・数学の論理を突き詰めたハードSFに対し、こうしたSF作品を「ワイドスクリーン・バロック」というようだ。
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新編 越後三面山人記

田口洋美「新編 越後三面山人記」

ダムに沈んだ山人集落の記録。著者は新潟県北部、朝日連峰の山中にある三面集落に1985年の閉村直前に長期滞在し、16ミリフィルムでその生活を記録した。狩りの習俗から、採集、農耕、日常生活まで、村人の語りを中心に丁寧にまとめており、失われた山村の生活の貴重な証言となっている。
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