二千億の果実

宮内勝典「二千億の果実」

「純文学」の小説がどうも小ぶりになっているような印象を受ける。日常を通じて普遍を描くこともできるだろうし、それこそが文学の可能性だろうけど、ただの本読みとしては、単純にもっとスケールの大きい小説を読みたいと時々思う。

前作「永遠の道は曲りくねる」をはじめとして、著者の作品のスケールは大きい。作品の長さそのものとは関係なく、人類の経験したすべてを小説にしたいという迫力が感じられる。

本作は、緩やかにつながる26編の物語で構成される。長編小説ではないが、短編集ともちょっと違う連作集。舞台はアフリカから南米、中国、東京まで広範囲にわたり、著者自身を彷彿とさせる人物も含むさまざまな人々が登場する。タイトルには、まさに地球上に生まれてきた全ての人類という意味が込められている(銀河系の星の数でもある)。

人類の祖先とされる約300万年前の化石人骨「ルーシー」から始まり、ゲリラ兵士、類人猿の研究者、天文学者、ストリートギャング――「個」の物語の積み重ねの上に、人類の歩みが浮かび上がる。

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