新作らくごの舞台裏

小佐田定雄「新作らくごの舞台裏」

落語家は自身で新作を創ることが多く、漫才や放送番組なども手がける「演芸作家」ではなく、「落語作家」を名乗る人は少ない。著者は桂枝雀のファンから専属作家になり、次第に一門以外からの依頼も増え、前例のなかった「専業の落語作家」として活躍を続けている。これまでに創った新作落語は263本(江戸落語や古典の改作も含めると倍以上!)にもなるという。
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渦 妹背山婦女庭訓 魂結び

大島真寿美「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」

浄瑠璃作者、近松半二の生涯を書く時代小説。近松門左衛門の縁者か弟子のように思われがちな名前だが、直接の関係はなく、半二が門左衛門に私淑して近松姓を名乗った。

近松半二こと穂積成章は、儒学者で浄瑠璃好きの父のもとで育ち、道頓堀の竹本座に通ううちに浄瑠璃を書くようになる。同時代の歌舞伎作者、並木正三と半二を幼馴染みの関係としたフィクションの設定が物語を魅力的なものにしている。
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花柳界の記憶 芸者論

岩下尚史「花柳界の記憶 芸者論」

芸者。日本文化のアイコンの一つとされながら、その実態はよく知られていない。遊女と混同されることもあるが、吉原などの廓において職掌は明確に分けられ、芸者の売色は固く禁じられてきた。新橋演舞場に勤め、東都の名妓に長年接してきた著者による本書は、古代の巫女にまで遡って芸者と遊女の本質を探る優れた日本文化論となっている。
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文楽の女 吉田簑助の世界

吉田簑助、山川静夫「文楽の女 吉田簑助の世界」

お初・徳兵衛(曽根崎心中)、お軽・勘平(仮名手本忠臣蔵)、お染・久松(新版歌祭文)、お半・長右衛門(桂川連理柵)……。
浄瑠璃などの近世文学に登場するカップルの名前は、大抵女性の名が先に語られる。それは物語の主人公が男であっても、究極的には女性の運命を描いていると多くの人が感じるからだろう。

社会の理不尽に絶え、時には運命に抗い、意地を通そうとする姿は男の登場人物以上に存在の光を放つ。その文楽の女たちについて、当代一の人形遣い、吉田簑助の芸談を挟みつつ、魅力を綴る山川静夫のエッセイ集。94年刊行本の新書版。
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平家物語 池澤夏樹=個人編集 日本文学全集09

池澤夏樹=個人編集 日本文学全集09
古川日出男訳「平家物語」

祇園精舎の鐘の声/諸行無常の響きあり/沙羅双樹の花の色/盛者必衰の理をあらはす

冒頭の文章は誰でも知っているのに、ちゃんと平家物語を読み通したことがある人は少ないのでは。古川日出男は壮大な軍記物語を、現代の小説の文体を取らず、あくまで琵琶法師の語りとして現代に蘇らせた。

「祇園精舎の鐘の音を聞いてごらんなさい。ほら、お釈迦様が尊い教えを説かれた遠い昔の天竺のお寺の、その鐘の音を耳にしたのだと想ってごらんなさい。
諸行無常、あらゆる存在(もの)は形をとどめないのだよと告げる響きがございますから」

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僕らの歌舞伎: 先取り! 新・花形世代15人に聞く

葛西聖司「僕らの歌舞伎: 先取り! 新・花形世代15人に聞く」

次代の花形15人のインタビュー集。

松也、梅枝、歌昇、萬太郎、巳之助、壱太郎、新悟、右近、廣太郎、種之助、米吉、廣松、隼人、児太郎、橋之助。一人一人の人柄が滲むと同時に、誰に、いつ、どんな教えを受けたのかを具体的に聞いていて、芸の継承や人間関係が分かって興味深い。歌舞伎は家柄が重視されるが、同時に家柄だけで花咲くこともない厳しい世界。15人とも勉強熱心。
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一日に一字学べば…

桐竹勘十郎「一日に一字学べば…」

桐竹勘十郎の芸は、人形に息を吹き込む、という表現が大げさではないことを教えてくれる。

14歳で入門して芸歴50年。修行の日々を振り返りつつ、文楽と人形への思いを語る。芸談というよりも、修行や仕事についての経験談となっており、文楽に興味のない人にも勧められる内容。好きであること、不安だから努力すること、自分で考えること。文楽の世界だけでなく、働くこと全般について考えさせられる。もちろん文楽の入門書としても優れた一冊。
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