残響

保坂和志「残響」

表題作と「コーリング」を収録。

誰かが誰かのことをぼんやりと考えている。誰かとの記憶を端緒に思いにふける。そんな場面が淡々と続いていく。

人が何を考えているか、他の人には分からない。誰かが誰かのことを考えている時、その誰かもまた別の誰かのことを考えていたりする。一瞬、思考が交錯することもあるかもしれない。そうした人の思念を可視化できたら、過去と今、人と人、世界の全てが有機的に絡み合っているのが分かるのでは。

バラバラだけど、人と人はつながっている。物語らしい物語はないけど、読み終えた後も残響のような響きが続く。

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