僕、双子、鼠、ピンボール。日常の断章を通じて綴られるのは、曖昧だが耐えられない喪失感。
“1973年のピンボール” の続きを読む
さむけ
探偵リュウ・アーチャーシリーズの第12作で、最高傑作と言われることも多い「さむけ」。原題は”The Chill”。
物語は、結婚直後に失踪した妻の捜索願いから始まる。やがて殺人事件が起こり、そこに過去の二つの殺人事件が絡む。
“さむけ” の続きを読む
文章読本
「作文の極意はただ名文に接し名文に親しむこと、それに盡きる。事実、古来の名文家はみなさうすることによつて文章に秀でたので、この場合、例外はまつたくなかつたとわたしは信じてゐる」
文章術の本は、作家、記者、ライター、学者など、さまざまな立場の人の手で数え切れないほど書かれてきたし、今も新刊が続々と誕生している。その大きな流れの一つとして、谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫など、作家による「文章読本」がある。その中でも丸谷才一の文章読本は、作家系の本としては、谷崎らの先行作の内容を踏まえていることもあり、決定版と言っていいだろう。
“文章読本” の続きを読む
掌の小説
掌編小説集。収録作は百編余。散文詩というような、限界まで削ぎ落としたような作品群で、気の利いたオチのあるショートショートではない。軽い読み物のつもりで手に取ったものの、いざ開いてみると一編、一編、読むのに体力が入り、一年以上かけて少しずつ読み進めてきた。
“掌の小説” の続きを読む
魯肉飯のさえずり
魯肉飯はロバプンと読む。「ルーローハン」ではなく、台湾語の響きをタイトルに冠した本作は、台湾ルーツの二人の女性――母と娘の物語。
この社会には「ふつう」という言葉のもとに“ささいな”抑圧が日常の隅々にまで満ちあふれている。
“魯肉飯のさえずり” の続きを読む
無伴奏ソナタ
11作が収められた短編集。表題作と冒頭に収録された「エンダーのゲーム」(後に長編化された)が有名だが、どれも傑作。明確なオチや背景の説明、あっと驚く結末が用意されているわけではないが、ドラマ性豊かで、それぞれに寓話のような読後感を残す。ハードSFというより、ファンタジー要素が強い。
“無伴奏ソナタ” の続きを読む
時計館の殺人
百年と一日
33の物語。いずれも短編というより掌編の短さだが、まずタイトルの長さが目を引く。
冒頭に収められているのが「一年一組一番と二組一番は、長雨の夏に渡り廊下のそばの植え込みできのこを発見し、卒業して二年後に再会したあと、十年経って、二十年経って、まだ会えていない話」。
“百年と一日” の続きを読む
たまたまザイール、またコンゴ
1991年のザイール、2012年のコンゴ。著者は、21年の歳月を隔てて、ザイール/コンゴ河の同じルートを丸木舟で旅する。一度目は夫婦で、二度目は若い研究者と。
“たまたまザイール、またコンゴ” の続きを読む