無伴奏ソナタ

オースン・スコット・カード「無伴奏ソナタ」

11作が収められた短編集。表題作と冒頭に収録された「エンダーのゲーム」(後に長編化された)が有名だが、どれも傑作。明確なオチや背景の説明、あっと驚く結末が用意されているわけではないが、ドラマ性豊かで、それぞれに寓話のような読後感を残す。ハードSFというより、ファンタジー要素が強い。

表題作は創作活動が完全に管理されるようになった社会が舞台。自由な創作活動は社会の秩序を壊すとして厳しく禁じられている。

生まれ持った才能で音楽の「創り手」として選別されたクリスチャンは、あらゆる先行作から切り離されて育てられたが、ふとしたことからバッハの音楽に触れ、その影響を受けてしまったことで音楽を取り上げられる。どうしても音楽を捨てられず、指を、次に声を奪われた彼は――。

とても短い作品だが、全く無駄のない珠玉の一編。心を打つドラマで、そこに芸術や人間の本質も描かれている。

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