深夜航路 午前0時からはじまる船旅

清水浩史「深夜航路 午前0時からはじまる船旅」

「深夜航路」というタイトルだけで旅情をかき立てられる。

夜行フェリーほど、旅をしている、という感覚を味わわせてくれる乗り物はない。フェリーに限らず、列車でもバスでも夜行には不思議な魅力がある。景色が見えないのになぜ旅の感慨がわくのか。そして、昼間の移動より記憶に残っていることが多いのはなぜだろう。

景色が見えないからこそ、なのかもしれない。著者も書いているように、夜の旅は内省的になる。内省する時間は自由の感覚とも結びついている。

著者は午前0時から3時までに出航する航路を「深夜航路」と定義し、該当する全航路を旅する。貨物運搬がメインのルートが多く、静かな船旅の様子が綴られている。

1.青森(2:40)→函館(6:20)
2.大洗(1:45)→苫小牧(19:45)
3.敦賀(0:30)→苫小牧東(20:30)
4.和歌山(2:40)→徳島(4:55)
5.神戸(1:00)→小豆島(7:15)
6.神戸(1:10)→新居浜(8:10)
7.直島(0:15)→宇野(0:30)
8.柳井(1:00)→松山(3:25)
9.徳山(2:00)→竹田津(4:00)
10.臼杵(0:55)→八幡浜(3:15)
11.宿毛(0:30)→佐伯(3:40)
12.博多(1:00)→対馬(5:30)
13.鹿児島(2:30)→桜島(2:45)
14.奄美大島(2:00)→鹿児島(18:50)

知らなかったルートも多く、ガイドとしても優れているが、なにより著者の文章の密度が心地良い。海の暗闇に包まれて物思いにふけり、船を下りてから少し足を延ばす。宿毛(0:30)→佐伯(3:40)の乗客は著者一人。夜の海、広いフェリーの客室にただ一人。ああ、こんな旅をしてみたい。

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