デビュー作「プレーンソング」の続編。続編と言っても、前作に物語がなかったのだから、そこに付け加えるべき新たな展開もない。成り行きで同棲している男3人、女1人。近所の野良猫に餌をやったり、競馬場に行ったり、マイペースな4人のとりとめのない日常が続く。
登場人物の内面の成長も、人生の不条理もここには無い(そうしたものを読み取る人もいるだろうから全く無いとまでは言わないが、少なくともそれが主題ではない)。それでも小説として成立するし、小説でしか掴めないものをたしかに掴んでいる。
日々をのんびりと過ごすことができたらそれほど幸福なことはない。あるいはそこまでは望めないとしても、時折、自分が身を置く日常をのんびりと眺めることができたら。
この作品には、語り手のぼくの仕事など故意に描写されていない部分がある。日常の穏やかだけど豊かな部分に目を向けていて、そのまなざしがこの作品をどんな劇的な物語よりも小説らしい小説にしている。