食べ歩くインド

小林真樹「食べ歩くインド」北・東編 南・西編

 

すごい本である。インドの多様な食を紹介――といっても、研究者による食文化論ではない。タイトル通り、全インドを食べ歩くためのグルメガイド。かなり分かりやすく書かれているが、それでもニハーリーやクルチャーなどなじみの言葉が次々と出てきて、文章を読みながら、異文化の中を旅している気分になる。「北・東編」「南・西編」の2分冊でボリュームたっぷり。旅行人の情報量の多いガイドブックを開いた時の興奮を思い出した。

インド料理=カレーというイメージは根強い(そもそもインドのカレーと、日本式、英国式のカレーは別物だが)。ライスを水に浸して微発酵した頃に食べるガンジ、乾燥牛糞で焼くバーティー(団子)、スプーンで食べるマッカニア(発酵バター)ラッシー――本書を読み進めると、数行ごとに知らない料理が出てきて驚かされる。チベットやイランの影響を色濃く受けた料理もあれば、インド化された中華料理、英国統治下で発展したカフェ料理などもある。多民族、多宗教で、高地から沿岸部まで広い国土を持つ国だから、食文化もひと言でまとめることはできない。

肉料理は鶏や羊、水牛が多いが、牛、豚、犬などを食べる土地もある。ヒンドゥー教徒は一般的に肉食を忌避するが、沿岸部では魚を海の野菜と捉えて肉食に含めなかったり、ベンガル地方の寺院では、プラサード(供物のお下がり)の肉が「ニラミーシュ・マンショ(菜食の肉)」として食べられたりするという。宗教と伝統的な食習慣の融合も興味深い。

著者には日本国内のインド料理店を巡る「日本の中のインド亜大陸食紀行」という本もある。インド好き、カレー好きはどちらも必読。

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