京極夏彦「遠野物語remix」
京極夏彦が遠野物語を現代語にしてリミックス。原文が平易で現代語訳があまり必要無い作品だが、並び替えと意訳で読みやすくなっている。一方、京極夏彦の特徴的な文体が、小説、フィクションの雰囲気を強くしてしまっているきらいもある。それでも、人と自然の関係が密接で、理解できない世界が日常のすぐ隣に横たわっている感覚、こうした世界に人は生きてきたのだろうと感じさせる原作の強い力は失われていない。
読んだ本の記録。
下川耿史「盆踊り 乱交の民俗学」
副題にあるように盆踊りの発生を巡る考察を通じて乱交の歴史を紐解く。歌垣や雑魚寝という性の場と、芸能の起源としての風流(ふりゅう、現代の「風流」ではなく、侘び寂びに対峙する奇抜な美意識)、それらはやがて村落共同体で盆踊りへと洗練されていく。しかし、明治に入ると盆踊りは禁止され、同時に性の世界は日常生活の表舞台から消えてしまった。
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香月洋一郎「景観写真論ノート 宮本常一のアルバムから」
宮本常一が撮った風景写真と、その景観を読み解いたメモをまとめた本。
田畑の形がどうなっているか、住家が密集しているか、分散しているか、山肌に何の木が植えられているか…景観にはその土地に生きた人々の暮らしの歴史が刻まれている。大学生の時に宮本の「空からの民俗学」を読んでそのことに気付かされて以来、景色を見る目が多少なりとも変わったのだが、その宮本のまなざしがよく分かる一冊。
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古本で購入。“性”の遠野物語。
記録に残らないぶん、より不変なものと考えられがちな性風俗。この本の出版は昭和の半ば、紹介されている習俗は昭和初期に記録されたものが中心だが、旅人に身内を夜伽に出す貸妻、意味不明な柿の木問答など、現代からすればかなり衝撃的なものばかり。
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宮本常一、安渓遊地「調査されるという迷惑 ―フィールドに出る前に読んでおく本」
善意の及ぼす結果や範囲に人は無自覚になりやすい。宮本常一の文章は1章だけだが、生涯を歩く、見る、聞くことに費やした宮本の問題意識が込められていて心に残る。
「調査というものは地元のためにはならないで、かえって中央の力を少しずつ強めていく作用をしている場合が多く、しかも地元民の人のよさを利用して略奪するものが意外なほど多い」
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宮本常一「日本人のくらしと文化 炉辺夜話」
宮本常一の講演をまとめたもの。宮本の農業や地域振興の指導者としての側面が示されていて興味深い。
各地の村や町がどう成り立ってきたのか、そこで人々がどう生きてきたのか、自ら歩いて蓄えた膨大な知識をもとに、全ての地域が対等に豊かであることを宮本は説き続けた。
「普通伝統と申しますと、古いことになじんで、そうして古いことを大事にしていくのが伝統だとお考えになっておられる方が多いのではないかと思いますが、伝統というのはそういうものではなくて、自分の生活をどのように守り、それを発展させていくか、いったか、その人間的なエネルギーを指しているものであるだろうと思うのです」
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宮本常一「家郷の訓」
宮本常一の代表作の一つ。地域社会で子供がどう育てられたのか、故郷・周防大島での、幼少期の自らの経験をもとに綴った克明な生活誌。一種の自伝ともいえ、ただ静的で、因習にとらわれているだけではなかった村の生活が鮮やかに記されている。
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網野善彦「宮本常一『忘れられた日本人』を読む」
文字資料に頼る歴史は、時代を経るごとに社会の多様さを見落としていく。
百姓、女性、老人、子供、遍歴民……日本列島の無文字社会を蘇らせる試みを続けた宮本常一。中世史家の網野善彦がその代表作を読み解く。
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宮本常一「周防大島昔話集」
宮本常一が祖父や両親から聞いた話を中心にまとめた昔話集。ブラッシュアップされていない、聞き取ったままの昔話はオチも教訓もないものが多いが、そのシュールさが面白い。解釈を拒むのが本来の物語の有りようなのだろう。他の地域や落語と共通するような話もあって興味深い。
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