宮本常一『忘れられた日本人』を読む

網野善彦「宮本常一『忘れられた日本人』を読む」

文字資料に頼る歴史は、時代を経るごとに社会の多様さを見落としていく。

百姓、女性、老人、子供、遍歴民……日本列島の無文字社会を蘇らせる試みを続けた宮本常一。中世史家の網野善彦がその代表作を読み解く。

「忘れられた日本人」はこれまでも何度か読み直してきたが、改めて宮本の問題意識や社会観のほとんどが詰まっていたことに気付かされる。そこに創作の要素が強い文章(土佐源氏)が混ざっていたとしても、本質的な価値は変わらない。

後半は「百姓≠農民」という網野の主張を、宮本の記述や「防長風土注進案」の記録から裏付ける。明治の壬申戸籍が農業以外で生計を立てている百姓も農民に分類し、その他の生業を農間稼ぎとしてしまったことが“農業社会”と社会の実像を単純化してしまった。

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