平田オリザ「演劇入門」
平田オリザによる戯曲の書き方を通じた演劇論。
「伝えたいことなど何もない。でも表現したいことは山ほどある」という表明はポストモダンの芸術全般に通じる。
演出にこだわりたいという意味ではなく、自分の世界の見方を提示したいという“表現”。
登場人物の持つ情報に差を持たせて会話を自然に展開させる設定上の工夫など、具体的な創作テクニックを細かく明らかにしており、“現実的”や“自然”とは違う舞台上の“リアル”がどこから来るのか分かりやすい。それは観客と舞台の間で、情報やコンテクストの違いを埋めるための内的対話がスムーズに行われるかにある。
抽象的な芸術論ではなく、実用的、実践的な内容で、演劇入門に最適の一冊。