伊藤計劃「The Indifference Engine」
伊藤計劃の遺したわずかな短篇を集めたもの。どの作品も、生きて、長篇として徹底的に書き込んでほしかった。
民族間の外見的な差異を不可視化する技術をタイトルに据え、戦争が終わった後の少年兵を描いた表題作には特に伊藤計劃らしい問題意識が見え、「虐殺器官」や、生きていれば、その後に書かれたであろう作品を思わせる。ただ、発想の原点にはルワンダの問題があるのだろうが、現実を超えるフィクションとしての何かを短篇では提示しきれなかったとも感じる。
収録作で最も短い「セカイ、蛮族、ぼく」も不条理小説のようで面白い。こんな作品ももっと読んでみたかった。