宮本常一の写真に読む失われた昭和

佐野真一「宮本常一の写真に読む失われた昭和」

日本中の村という村を歩き、十万点の写真を残した宮本常一。民家の軒先や畑、林……写真家ではなく、あくまでメモとして写したものなので「写真」としての質が高いわけではないが、それらの写真は土地の人々がどんな生活をし、自然の中でどう労働してきたのかを雄弁に伝えている。
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民俗のふるさと

宮本常一「民俗のふるさと」

日本列島のマチやムラ、人々の慣習がどう成り立ってきたのか。昭和39年、日本の人口が大きく流動し始め、都市住民の多くがまだ郷里を持っている時代に書かれた「ふるさと論」。民俗学の枠を超え、そのエネルギーを見つめ続けた世間師、宮本常一らしい社会・民衆史。

「…それが時にはわれわれの生活文化を停滞させることもあるが、誰に命令されなくても自分の生活を守り、発展させるためのエネルギーにもなる。ほんとの生産的なエネルギーというものは命令されて出て来るものではない」

女の民俗誌

宮本常一「女の民俗誌」

「平凡だが英知にみちた生活のたて方がもっと掘り起こされてよいように思う」

日本列島の無文字社会を丹念に記録した宮本の膨大な著作から、女性に関する文章を集めたもの。

生きることへの敬意といたわりに満ちたまなざし。母処婚や姉家督制度の話からは日本社会の多様性も浮かび上がる。最後に収録された母に関する文章も美しい。

庶民の発見

宮本常一「庶民の発見」

人々がどう暮らしてきたか。語られなかった歴史を訪ね歩き、膨大な記録を残した宮本常一。

家族、生業、教育、伝承……と、テーマが網羅的で他の著作よりやや堅さがある一方、所々に“庶民”の記録に生涯をかけるという熱気も感じられる。話題は日本全土に及び、改めて巨人だと思う。

性の民俗誌

池田弥三郎「性の民俗誌」

古典文学や小唄、川柳を通じて日本の性や男女関係の多様さを説き明かす。

大変面白い。ただ、この本も含めて、こうしたテーマは民俗を直接採集したものが少ないのが残念。赤松啓介氏の本なんかも非常に刺激的だけど、記憶による部分が多いし、もっと体系的な本が無いかな。無理か。

「宮本常一」 ちくま日本文学22

「宮本常一」 ちくま日本文学22

未読の文章が何編か収録されていたので購入。夭逝した子について書いた「萩の花」が印象的。

“人は暗さの中にジッとしていられるものではない。暗い中に火をともそうとするものである。私はわが子が小さいながらもその火をともすものであってもらいたいと思った”
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民俗学への招待

宮田登「民俗学への招待」

民俗学の大家、宮田登氏のコラム。年中行事や民間信仰を始め、学校の怪談など都市民俗学にも触れ、興味深いテーマを多く取り上げている。ただ、ダブりも多いし、どれも尻切れトンボな印象。あとがきで新聞に掲載したコラムと知って納得。「民俗学への招待」と言うタイトルから入門書と勘違いしたが、エッセイと考えれば、それなりに面白い。

東北学 忘れられた東北

赤坂憲雄「東北学 忘れられた東北」

近代日本と共に出発した柳田民俗学は、稲作を中心とした“瑞穂の国”として「ひとつの日本」を築く試みだった。それは東北の民とアイヌの間に強固な線引きを行い、共通性に目を閉ざした。境界を築くための「民俗学」から抜け出した時、縄文以前から人が住み、南北の文化が重なり合う東北の姿が見えてくる。

「忘れられた日本人」を著した宮本常一が晩年たどり着きつつあった“いくつもの日本”を見いだす民俗学へ。示唆に富んだ書。