ダニエル・T・マックス「眠れない一族 −食人の痕跡と殺人タンパクの謎」
中年期に発症し、不眠状態から死に至る「致死性家族性不眠症」。その遺伝病に代々苦しめられてきたイタリアの一族の物語を軸に、スクレイピー、BSE、クロイツフェルト・ヤコブ病、クールーなどのプリオン病の歴史と、それに迫る科学者たちの姿を描く。
非生物であるが故に従来の感染症の常識を覆す異常プリオン(加熱しても、灰になっても、放射線を当てても死なない)。その異常プリオンが、肉骨粉などの“共食い”を通じて感染を拡大していく。
現在の人類の遺伝子型から、人類にはかつて食人習慣があり、それによってプリオン病が蔓延、影響を受けやすいタイプが淘汰された可能性があるという衝撃的な事実も書かれている。生化学分野の知識不足で読み通すのに苦労したが、下手なミステリーよりスリリング。