旅人 ある物理学者の回想

湯川秀樹「旅人 ある物理学者の回想」

日本人として初めてノーベル賞を受賞した物理学者の、少年期から青年期までを綴った自伝。

内向的で、兄弟の中でも目立つ存在ではなかった少年が、どんな青春時代を過ごし、学問に目覚めていったのか。

文学少年だった著者は、数学や哲学などの学問に触れながら、次第に物理学への興味を深めていく。「旅人」とタイトルにあるように、時代の空気、人や本との出会い、さまざまな偶然が人を予想も付かなかった場所に運んでいく。

偉大な科学者の旅路に触れ、改めて人生の不思議を思う。自分自身、これまでの歳月を数年ごとに区切った時、先のことは全く予想できなかった。科学史に名を残した著者と、何も大成することなくふらふらしている自分では、もちろん天と地以上の差があるけれど。

自伝という知識だけで読み始めたら、中間子の着想を得た所で終わってしまい拍子抜けしたものの、それでこの本の価値が損なわれるわけではない。中高生の時に読んでいれば、進路が変わったかもしれない。

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